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株式会社設立の人数要件と手続きの流れをわかりやすく解説

株式会社を設立する際には、どの程度の人数が必要なのかという点は、必ず押さえておきたい重要な基礎知識です。

ここでは、株式会社設立の最低人数要件や、関連するポイントについて詳しく解説します。

会社法における人数要件の変遷

株式会社設立時の人数要件は、過去と現在で大きな違いがあります。

2006年5月に施行された新しい会社法(会社法第2条)では、株式会社を設立するために必要な最低人数が大幅に緩和されました。

施行年最低発起人数特徴
2006年5月以前(旧商法)7人多数の発起人が必要
2006年5月以降(会社法)1人発起人1名でも設立可能に

このように、従来は7名の発起人が必要だったものが、現在では1名から株式会社を設立できるようになっています。

現在の会社法では、個人や家族、少人数での起業もしやすくなりました。

発起人と設立時取締役の人数

株式会社設立において必要となる人数にはいくつかの区分がありますが、主に注目すべきは発起人設立時取締役の人数です。

区分必要人数備考
発起人1人以上法人・個人どちらでも可(日本国籍・外国籍問わず)
設立時取締役1人以上同一人物が発起人兼取締役も可能

特に中小企業や個人事業主の法人化では、ほとんどの場合で1人の発起人かつ1人の取締役だけで株式会社を設立しています。
なお、「監査役」や「取締役会」は必須ではなく、設立形態や事業規模によって任意で設置可能です。

株主の人数制限について

株式会社設立時に気になるもう一つのポイントが株主の人数制限です。

株式会社は株主(出資者)の所有となりますが、会社法上、株主の人数には下限・上限ともに制限がありません

設立時の発起人がそのまま全株式を保有する場合は、発起人1名=株主1名となります。設立後、事業の成長に応じて株主を増やしたり、株式を譲渡して複数名体制とすることも自由です。

株主の人数設立時の下限設立時の上限備考
株式会社1人以上制限なし1人で100%出資でも設立可能

このため、最小1名の発起人かつ1名の株主で、株式会社の設立が認められています
ただし、会社の規模拡大や資本政策の観点からは複数株主体制もよく採用されています。

株式会社を設立する際には、法律で定められた必要最低限の人員構成を理解しておくことが重要です。

ここでは株式会社の設立時に必要となる発起人・取締役・代表取締役・監査役など、主要な役割とその要件について詳しく解説します。

発起人とは誰か

発起人とは、株式会社の設立を企画し、必要な手続きを主導する者を指します。

発起人は株式会社設立時に定款を作成し、資本金の出資も行う中心的な存在です。

会社法の改正により、発起人は必ずしも複数名である必要はなく、現在は1人からでも株式会社を設立することができます

発起人は個人だけでなく法人でも務めることができます。
ただし、未成年者や成年被後見人などは発起人資格がないため注意が必要です。

役割人数要件資格要件
発起人1人以上個人または法人(但し一定の制限あり)

取締役・代表取締役の要件

取締役は、株式会社の経営を担う役員で、株式会社の設立時には最低1人以上の選任が必要です。
また、会社の実質的な運営責任を負うのが代表取締役です。

取締役会設置会社でなければ、代表取締役は必ずしも必要ではなく、取締役1名のみでも株式会社を設立可能です。

役職最低人数設置の必要性
取締役1人以上必須
代表取締役1人以上(取締役会非設置会社の場合選任不要)取締役会を設置する場合のみ必須

なお、複数の取締役を置きたい場合や、会社の規模拡大を見据えて取締役会を設置する場合には、取締役が3人以上、監査役が1人以上必要となります

監査役の設置が必要となる場合

監査役は、取締役の職務執行を監査する役割を担います。

株式会社の設立時に必ずしも監査役を設置する必要はありませんが、以下の場合は設置が義務付けられています。

  • 取締役会を設置した場合
  • 監査役会や会計監査人を設置する場合

一般的な中小企業では監査役の設置は任意ですが、取締役会設置会社の場合は監査役が1名以上必要です。

役職最低人数設置義務
監査役1人以上(取締役会設置時)取締役会設置会社・監査役会設置会社のみ必須

監査役を含めた役員の選任・設置状況は、会社の規模や事業内容により最適に決定することが重要です。

必要最小限の人員構成にすることで設立時の負担を軽減することも可能です。

家族だけで設立する場合のポイント

株式会社は1人から設立することが可能ですが、家族のみで会社を設立する際は注意が必要です。

たとえば、発起人や株主をすべて家族にすると、役割や責任が曖昧になりやすい傾向があります。
また、代表取締役・取締役・監査役といった役職に全員が就く場合には、各役員の権限や業務分担、後継ぎ問題が顕在化することが多いため、事前にしっかり話し合ってルールを定めておくことが重要です。

さらに、金融機関からの融資や公的制度の申請時、役員構成が全員親族であると、経営の独立性や組織の実効性を問われるケースもあるため、外部協力者の登用も検討しましょう。

家族経営における主な課題

課題対策例
責任の所在が曖昧になる役割ごとの職務内容を定款や規則で明文化
後継者問題株式譲渡や持分整理について事前に協議
第三者の信頼性確保外部の取締役や監査役を招聘する

社員(出資者)との違い

株式会社設立時の「人数」としてよく議論されるのが、「社員(会社法上の社員)」と「従業員」や「発起人・株主」との違いです。

株式会社において「社員」とは出資者、つまり株主を指します。

一方、一般的な従業員は「社員」と呼ばれても会社法上の位置づけは異なります。

区分設立に必要か意味・定義
発起人必須設立手続きを主導し、定款に署名押印し出資
株主(会社法上の社員)必須会社の所有者であり、議決権などを持つ
従業員(雇用契約)設立時は不要会社と雇用契約を結ぶ職員

株式会社設立時は「発起人」および「株主」となる人数が重要で、実際に従業員を雇う必要はありません。

会社の経営・運営と働く人の人数は分けて考えることがポイントです。

最低人数を満たさない場合のリスク

会社法の改正により、株式会社は発起人および株主が1人でも設立できるようになりました。
しかし、取締役会や監査役会など、設置する機関の内容によっては、多人数が必要になる場合があります。

たとえば、「取締役会設置会社」とする場合は、3名以上の取締役と1名以上の監査役が必要です。

設置したい機関必要な人数
取締役会取締役3名以上・監査役1名以上
監査役会監査役3名以上(うち社外2名以上)
1人会社(最小構成)取締役1名

もし役員定数や法令に定める人数を欠く状態になると、登記申請ができない、設立が無効となる、または行政指導・業務停止を受ける恐れがあるため、常に定款と会社法の要件を確認しつつ手続きを進める必要があります。
また、事後的に人数が欠けた場合も、速やかに追加選任を行わなければなりません。

株式会社の設立には、法律で定められた手順を順番に進めていく必要があります。

以下では、実際に株式会社を設立する際に必要となる主要な手続きの流れについて解説します。

各ステップには人数要件に関連する確認事項が含まれています。

定款作成と認証

株式会社を設立する最初のステップは定款(会社の基本的な規則)の作成と、公証役場での認証です。

  • 発起人全員が会社の基本事項(商号、目的、本店所在地、発行可能株式総数等)を決定します。
  • 定款には発起人全員の署名または記名押印が必要です。発起人は1名でも可ですが、複数名でも構いません。
  • 作成した定款を所轄の公証役場に持参し、公証人による認証を受けます。

資本金の払込と人数確認

定款認証後、資本金の払い込みが必要です。

  • 株式を引き受けた発起人および出資者は、定款に記載した金額の資本金を発起人代表の銀行口座などに払込を行います。
  • 設立時に必要な最低人数(発起人・株主・取締役等)が正しく揃っているかを確認しておく必要があります。
役割最低必要人数備考
発起人1名以上法人・個人いずれも可
設立時株主1名以上発起人と同一でも可
取締役1名以上取締役会設置会社は3名以上
代表取締役1名単独でも可
監査役0名〜1名以上設置は任意(取締役会設置会社は1名以上必要)

登記申請と法的手続き

資本金の払い込みが完了した後、株式会社の設立登記申請を行います。

登記によって法人格が正式に取得されます。

  1. 設立登記に必要な書類(定款、払込証明書、発起人・取締役・監査役の就任承諾書、印鑑届出書など)を作成します。
  2. 法務局に設立登記申請を行います。登記申請日が株式会社の設立日となります。
  3. 会社印(法人印)の登録もあわせて行います。

登記申請後、会社設立が完了し、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や法人番号が発行されます。 
この過程で改めて、必要な人員が要件を満たしているか確認し、最終的な設定内容と齟齬がないか注意しましょう。

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株式会社以外にも、日本にはさまざまな会社形態が存在します。

それぞれの設立に必要な人数要件や特徴には違いがあります。

ここでは、株式会社と合同会社(LLC)、合名会社、合資会社の人数要件について比較し、どのような場合にどの会社形態が適しているのかをわかりやすく説明します。

会社形態設立に必要な最低人数主な構成員の名称特徴
株式会社1人発起人・取締役資本と経営が分離しやすく大規模な事業に適する。最新の会社法改正により1人で設立が可能
合同会社(LLC)1人社員(出資者)会社運営が柔軟で、出資者=経営者。1人で設立可能で、設立費用も安く済む。
合名会社1人無限責任社員社員が直接経営にあたり1人でも設立可能。経営者全員が無限責任を負う。
合資会社2人無限責任社員・有限責任社員必ず2種類以上の社員(無限責任・有限責任)が必要。経営に参加しない出資者も可。

合同会社(LLC)との違い

合同会社(LLC)は、2006年に新設された会社形態で、最低1人の社員(出資者)がいれば設立可能です。

社員は出資者であり、そのまま経営にも参画します。株式会社と比べて、設立コストが低く、機関設計もシンプルであるため、小規模なビジネスやベンチャーに選ばれる傾向があります。
ただし、株式会社に多い「発起人」や「取締役」という役職は存在せず、すべてが「社員」となります。

また、株式公開や大規模な資金調達を目指す場合は株式会社のほうが適していますが、少人数、かつ運営の自由度やスピードを重視する場合は合同会社のほうが有利なケースが多いです。

合名会社、合資会社との人数要件

合名会社は、現行の法制度下でも設立可能な会社形態で、無限責任社員が1人いれば会社設立が可能です。

社員全員が経営者として業務執行権を持ちますが、出資額の大小にかかわらず会社の債務に無限責任を負うため、近年は数が減っています。

合資会社は、無限責任社員と有限責任社員の2種類の社員が必要であり、最低2人以上でしか設立できません。

無限責任社員は経営に直接関与し、有限責任社員は出資額の範囲でしか責任を負いません。
これにより、出資だけして経営に関与しない社員を交えた経営体制が採れます。

このように、日本の会社形態には設立の際に必要とされる人数や、メンバーの責任範囲・役割分担といった面で大きな違いがあります。

自分に適した会社形態を選ぶ際は、将来の事業規模・運営体制・リスクの取り方なども含めて慎重に比較することが重要です。

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ひとりで株式会社を設立できるか

株式会社設立を検討されている方からよく寄せられる質問に、「ひとり(1人)で株式会社を作れるのか」というものがあります。
2006年施行の会社法の改正によって、発起人は1人でも株式会社を設立できるようになりました。
また、設立時の株主も取締役も1人で兼任可能です。
そのため、資本金や必要書類が整えば、家族や知人の協力を得ずに、個人単独で手続きを進めることができます。

ただし、法人格を持つ株式会社としての責任や義務(決算公告や税務申告など)は全て1人で担うこととなるため、事業計画や運営体制を十分に検討することが重要です。

設立後に人数を変更する方法

株式会社設立後、「役員や株主の人数を増やしたい」「取締役を減らしたい」というケースも発生します。
設立後の人数変更は以下のように行うことが可能です。

変更対象変更方法必要手続き
取締役の追加・退任株主総会の決議で選任・解任辞任届や選任議事録を作成・登記申請
株主の追加株式譲渡や新株発行株主名簿の更新・場合により登記
監査役の設置定款の変更・株主総会決議定款変更の登記申請

上記の通り、法的な手続きや登記が必要となる場合が多いため、専門家(司法書士や行政書士)と相談しながら確実に進めることをおすすめします。

人数に関する誤解とその解説

株式会社設立における「人数」に関して、しばしば誤解されやすい点を解説します。

誤解されがちなポイント正確な内容
2人以上でなければ設立できない1人(単独)でも株式会社は設立できます。
発起人と取締役は別の人でなければならない発起人と設立時取締役の兼任が可能です。
設立後も常に複数人でないといけない設立後も取締役や株主を1人にすることが認められています。
監査役は必ず必要監査役は一定要件を満たさない限り設置義務はありません。

このように、従来の制度や他社制度との混同から誤解が生まれることがあります。
最新版の会社法を踏まえ、正確な情報を基に株式会社設立の準備を進めましょう。

株式会社設立には、発起人や取締役など人数に関する要件が法律で定められています。

近年の会社法改正により、1人でも株式会社を設立できるようになりましたが、役割や手続きは正しく理解する必要があります。

人数要件を満たしていないと登記できず、トラブルの原因にもなるため、注意が必要です。

他の会社形態とも比較し、自社に適した形態を選びましょう。

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