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会社設立時の株価の決め方:税金・資金調達を最適化するプロの視点

会社設立時の株価を安易に決めると、将来の税金や資金調達で思わぬ不利益を被る可能性があります。

この記事を読めば、資本金と発行株式数の最適なバランスから、税務リスク(みなし贈与など)を回避し、将来の増資やIPOを有利に進めるための戦略的な株価の決め方がわかります。

結論として、設立時の株価は将来の株式分割やストックオプション発行を考慮し、1株1万円や5万円といったキリの良い数字に設定することが、実務上多くのメリットをもたらします。

会社設立というと、多くの起業家がまず「資本金をいくらにするか」を考えます。
しかし、それと同時に「1株あたりの株価をいくらにするか」という決定も、将来の会社経営を大きく左右する極めて重要な要素です。
この最初の株価設定を安易に決めてしまうと、後々の資金調達や税務、事業承継の際に思わぬトラブルや不利益を被る可能性があります。

この章では、なぜ株価設定が重要なのか、そしてその決定が具体的に何に影響を及ぼすのかを詳しく解説します。

なぜ会社設立時に株価を決める必要があるのか

会社を設立する際には、会社法に基づき、定款に「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」を記載する必要があります。
そして、その出資金(資本金)と引き換えに株式を発行します。
このとき、「資本金 ÷ 発行する株式の総数 = 1株あたりの株価」という関係が成り立ちます。

つまり、資本金の額と発行株式数を決めると、1株あたりの株価は自動的に決まります。
この株価は、あなたの会社の価値を示す最初の指標であり、会社の所有権の最小単位の値段を定義する行為です。

設立時に決定した株価は、会社の成長の礎となる最初の「基準点」となります。

後から株価を変更することは、増資や株式分割といった手続きが必要となり、特に株主が複数いる場合は調整が非常に困難になるため、設立時の慎重な判断が不可欠なのです。

株価設定が影響する要素

会社設立時の株価設定は、単なる計算上の数値ではありません。

以下に示すように、会社の財務、税務、法務の各側面に深く関わってきます。

具体的にどのような影響があるのか、表で確認してみましょう。

影響する要素概要と具体的な影響
資金調達将来、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)から出資を受ける際、株価が資金調達額と放出する株式数を決定します。株価が低い場合:同じ金額を調達するために多くの株式を渡す必要があり、創業者(経営者)の持株比率が大きく低下するリスクがあります。株価が高い場合:少ない株式で資金調達が可能ですが、投資家にとって割高感があり、出資のハードルが上がる可能性があります。
税金株式の譲渡や贈与、ストックオプションの発行時に、株価が税額計算の基礎となります。低すぎる株価:設立時以降に会社の価値が上がった後、時価よりも著しく低い価額で第三者に株式を譲渡すると、差額が「みなし贈与」と判断され、贈与税や所得税が課されるリスクがあります。高すぎる株価:将来の事業承継や相続時に、株価の評価額が高くなりすぎて、後継者や相続人に多額の税金負担が発生する可能性があります。
株主構成と資本政策共同創業者や従業員に株式を付与する際の基準となり、経営の意思決定に影響を与えます。1株あたりの株価は、誰にどれだけの割合の株式を持ってもらうかという資本政策の根幹をなします。不適切な設定は、株主間の公平性を損なったり、将来の経営権争いの火種になったりする可能性があります。
ストックオプション従業員や協力者へのインセンティブとしてストックオプションを発行する際、その権利行使価格は発行時の株価(時価)を基準に設定されます。設立時の株価設定が、将来のストックオプション制度を設計する上での出発点となり、優秀な人材を確保・維持するための重要な要素となります。

このように、会社設立時の株価は、その後の会社の成長戦略全体に影響を及ぼす重要な意思決定です。

目先の設立手続きの簡便さだけで決めるのではなく、将来の事業展開を見据えた上で、税務・法務・財務の多角的な視点から最適な株価を設定することが、成功への第一歩と言えるでしょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

会社設立における株価、すなわち「1株あたりの金額」は、法律でいくらにしなければならないという決まりはありません。
発起人が自由に設定することができます。
しかし、この株価と発行する株式数をどのように決めるかによって、将来の資金調達や事業承継、税務上の取り扱いが大きく変わってくるため、最初の段階で慎重に検討することが極めて重要です。

ここでは、会社設立時の株価を決める上での基本的な考え方と、実務でよく用いられる設定パターンについて、それぞれのメリット・デメリットを交えながら詳しく解説します。

1株あたりの株価と発行株式数の関係

会社の資本金、1株あたりの株価、発行株式数の間には、以下の関係式が成り立ちます。

資本金の額 ÷ 発行済株式総数 = 1株あたりの株価

例えば、資本金を300万円で会社を設立する場合、以下のような様々な組み合わせが考えられます。

  • 1株あたりの株価を1万円にする場合:発行株式数は300株 (300万円 ÷ 1万円)
  • 1株あたりの株価を5万円にする場合:発行株式数は60株 (300万円 ÷ 5万円)
  • 1株あたりの株価を1,000円にする場合:発行株式数は3,000株 (300万円 ÷ 1,000円)

どの組み合わせを選んでも資本金の額は同じですが、発行株式数が変わってきます。
この発行株式数の多寡が、将来の経営戦略に影響を与えます。

例えば、従業員向けのストックオプションを発行したり、第三者から出資を受け入れたり(増資)する際に、株式数が少なすぎると細かな持分比率の調整が難しくなります

一方で、株式数が多すぎると管理が煩雑になる可能性も考慮しなければなりません。
そのため、設立時の株価と発行株式数は、将来の資本政策を見据えた上でバランス良く決定する必要があります。

一般的な株価設定のパターンとメリット・デメリット

法律上の定めはないものの、実務上はいくつかの一般的な設定パターンが存在します。

ここでは、特に多く見られる「1株1円」「1株5万円以上」、そして現在主流となっている「1株1万円」のケースを比較しながら、それぞれのメリットとデメリットを解説します。

設定パターンメリットデメリット主な採用ケース
1株1円発行株式数を非常に多くできるストックオプションなど細かな株式比率の設計がしやすい少額の資本金でも多くの株式を発行できる1株の価値が低く感じられることがある株式数が膨大になり管理が煩雑になる可能性がある税務上の「みなし贈与」のリスクに注意が必要資本金が非常に少額な場合や、設立初期から複雑な資本政策を計画しているスタートアップなど
1株1万円計算がしやすく管理もしやすい将来の増資や株式譲渡において柔軟な対応が可能株価として適度な価値がありバランスが良い特筆すべき大きなデメリットはない現在のスタートアップや中小企業の設立時において、最も一般的に採用されている
1株5万円以上1株あたりの価値が高く、会社の信頼性が高く見えることがある発行株式数が少なくなるため管理が容易少額の増資や株式譲渡がしにくい細かなストックオプションの発行には不向き柔軟な資本政策のためには株式分割が必要になる場合がある旧商法時代に設立された会社や、伝統を重んじる一部の士業法人など

1株1円のケース

1株1円に設定すると、資本金の額と同じ数の株式を発行することになります。
例えば資本金100万円なら100万株です。
この設定の最大のメリットは、発行株式数が非常に多くなるため、将来のストックオプション発行やエンジェル投資家からの少額出資など、細かな単位での資本政策が実行しやすい点にあります。
しかし、1株あたりの価値が低すぎることや、株数が多くなりすぎて管理が大変になるというデメリットも存在します。
また、極端に低い株価設定は税務上のリスクを伴う可能性もあるため、専門家への相談が推奨されます。

1株5万円以上のケース

1株5万円という設定は、かつての商法で定められていた「額面株式」制度の名残です。
現在この制度は廃止されていますが、慣習として今でも採用されることがあります。
1株あたりの金額が高いため、発行株式数は少なくなります。
これにより、株主管理が容易になる、1株の価値に重みが感じられるといったメリットがあります。
しかし、その反面、株式数が少ないことで、将来第三者に株式を一部譲渡したり、少額の資金調達を行ったりする際の柔軟性に欠けるという大きなデメリットがあります。
例えば、1株5万円の会社が10万円の出資を受けたい場合、2株しか割り当てられず、細かな持株比率の調整ができません。
そのため、現代のスピード感が求められるスタートアップには不向きな設定と言えるでしょう。

結論として、特別な理由がない限り、現在の会社設立においては計算のしやすさと将来の柔軟性を両立できる「1株1万円」が最もバランスの取れた選択肢として広く推奨されています。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

会社設立時の株価設定は、単に資本金の額を決めるだけの手続きではありません。
この初期設定が、将来の税務に大きな影響を及ぼす可能性があります。
特に「低すぎる株価」と「高すぎる株価」は、それぞれ異なる税務上のリスクを内包しています。

ここでは、税金の観点から見た株価設定の注意点をプロの視点で詳しく解説します。

低すぎる株価設定のリスク(みなし贈与など)

会社設立時、発起人が全員同じ金額で株式を引き受ける場合、株価がいくらであっても税務上問題になることはほとんどありません。
しかし、その後の第三者割当増資や株式譲渡の際に、設立時の株価が不適切に低いと大きな問題に発展する可能性があります。

最も注意すべきなのが「みなし贈与」のリスクです。
これは、会社の業績が向上し、株の価値(時価)が上がったにもかかわらず、著しく低い価額で第三者(例えば、経営者の親族や特定の役員)に株式を発行・譲渡した場合に発生します。

具体例を考えてみましょう。

設立時に1株1万円で発行した株式が、事業の成長により時価10万円まで価値が上がったとします。
このタイミングで、創業者の子供に1株1万円で株式を譲渡した場合、税務署は差額の9万円(10万円 – 1万円)を「贈与」とみなし、贈与税の課税対象とする可能性が非常に高いのです。

会社設立時に1株1円などの極端に低い株価を設定した場合、少しの利益が出ただけでも1株あたりの価値が大きく上昇しやすくなります。
その結果、設立後早い段階で役員や従業員に株式を割り当てる際に、意図せず「みなし贈与」と判断されるリスクが高まるため、設立時点から将来の株式移動の可能性を考慮しておくことが重要です。

高すぎる株価設定のリスク(将来の事業承継など)

逆に、1株あたりの株価を高く設定しすぎることにもデメリットが潜んでいます。
特に、将来の事業承継や相続、新たな資金調達の場面で大きな足かせとなることがあります。

高すぎる株価設定が引き起こす主なリスクは以下の通りです。

リスクの種類具体的な内容
事業承継・相続株価が高いと、会社の株式評価額も高額になります。これにより、後継者が株式を買い取る際の資金負担が過大になったり、相続時に莫大な相続税が発生したりする可能性があります。円滑な事業承継の大きな障害となり得ます。
ストックオプション従業員へのインセンティブとしてストックオプションを発行する際、1株あたりの株価が高いと権利行使価格も高くなります。これにより、従業員にとってのキャピタルゲインの魅力が薄れ、制度が形骸化してしまう恐れがあります。
資金調達の柔軟性1株あたりの価格が高いと、少額の出資を受け入れることが難しくなります。例えば1株50万円の場合、最低でも50万円単位での出資が必要となり、エンジェル投資家などからの小口の資金調達の機会を逃す可能性があります。

設立時の株価は、その後の会社の財産(純資産)の増減を反映する基準となります。

初期設定が高いと、株価が下がりにくく、将来的に柔軟な資本政策をとることが困難になるケースがあることを覚えておきましょう。

会社設立時の株価と税務調査

会社設立時の株価設定そのものが、直接的に税務調査の対象となることは稀です。

税務調査で問題となるのは、設立「後」の株式の移動、すなわち第三者割当増資や株式譲渡が行われた際の「取引価額の妥当性」です。

税務署は、特に同族会社における以下のような株式取引を注視しています。

  • 創業者一族間での株式の売買
  • 役員や従業員への有利な条件での株式発行(譲渡)
  • 関連会社間での株式移動

これらの取引において、客観的な時価よりも著しく低い価額が設定されていると、税務署からその取引を否認される可能性があります。

個人への譲渡であれば「みなし贈与(贈与税)」、役員への譲渡であれば「役員賞与(給与所得として源泉徴収が必要)」と認定され、予期せぬ追徴課税や延滞税が発生するリスクがあります。

設立時の株価は、こうした将来の取引における株価算定の出発点となります。
そのため、設立段階で専門家のアドバイスを受け、将来起こりうる税務リスクを見据えた上で、適切な株価を設定することが、長期的に見て健全な会社経営の礎となるのです。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

会社設立時の株価設定は、単に資本金を決めるだけの手続きではありません。
特に、将来的に外部からの資金調達を視野に入れている場合、設立時の株価は「資本政策」の第一歩となり、企業の成長戦略に極めて大きな影響を与えます。

ここでは、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)からの出資、従業員向けのストックオプション、そして将来のIPO(新規株式公開)までを見据えた、戦略的な株価の決め方を解説します。

エンジェル投資家・ベンチャーキャピタルとの関係

将来、事業を拡大するために外部から資金調達を行う際、投資家は企業の「バリュエーション(企業価値評価)」を基に投資を判断します。
このバリュエーションは、以下の式で算出されるのが一般的です。

企業価値評価額 = 1株あたりの株価 × 発行済株式総数

会社設立時の株価設定は、この最初の企業価値評価の基礎となります。

投資家との交渉において、設立時の株価がいかに重要になるかを理解しておく必要があります。

例えば、資本金100万円で会社を設立する場合を考えてみましょう。

設定パターン1株あたりの株価発行株式数資金調達時の影響
ケースA5万円20株発行株式数が少ないため、少しの株式放出で持株比率が大きく変動しやすい。交渉がシビアになる可能性がある。
ケースB1,000円1,000株株式数が多く、比率の調整がしやすい。投資家も出資額に応じた株式数を取得しやすく、交渉の柔軟性が高まる。

投資家から出資を受ける際、新たに株式を発行(第三者割当増資)します。
このとき、設立時の発行株式数が少ないと、少しの増資で創業者の持株比率が大幅に低下し、経営の主導権を失うリスクがあります。

逆に、設立時の株価を不当に高く設定すると、投資家にとって割高感が出てしまい、資金調達そのものが難しくなる可能性も否定できません。

そのため、設立時点では1株1,000円〜1万円程度で、ある程度の株式数を発行しておくことが、将来の資金調達交渉をスムーズに進めるための鍵となります。

投資家との交渉を有利に進め、適切な経営権を維持するためにも、戦略的な株価設定が不可欠です。

ストックオプション発行を見据えた株価設定

スタートアップ企業が成長するために、優秀な人材の確保は最重要課題の一つです。
そのための有効なインセンティブ制度が「ストックオプション」です。

ストックオプションとは、役員や従業員が、あらかじめ定められた価格(行使価額)で自社の株式を購入できる権利のことです。

将来、会社の株価が上昇した際に権利を行使し、株式を市場価格で売却すれば、行使価額との差額が利益(キャピタルゲイン)となります。

この行使価額は、ストックオプションを付与する時点の株価(時価)を基準に設定されます。
つまり、会社設立時の株価を低めに設定しておくことで、創業初期に参画してくれたメンバーに付与するストックオプションの行使価額も低く抑えることができます。

行使価額が低いほど、将来得られるキャピタルゲインが大きくなるため、従業員のモチベーション向上に繋がり、優秀な人材の採用やリテンション(定着)において強力な武器となります。

例えば、1株100円の時にストックオプションを付与された従業員は、将来株価が1,000円になった時に大きな利益を得られますが、1株5万円の時に付与された場合は、株価がそれ以上に大きく成長しない限り、魅力が薄れてしまいます。

ただし、税制上の優遇措置が受けられる「税制適格ストックオプション」の要件を満たすためには、行使価額を付与契約時の時価以上に設定する必要があるなど、専門的な知識が求められます。

安易な価格設定は避け、将来の組織戦略を見据えて株価を決定することが重要です。
そのためにも、発行可能株式総数には、ストックオプションとして発行する分(一般的に発行済株式総数の10%〜15%程度)をあらかじめプールしておくという考え方も必要になります。

将来の株式分割やIPOを見据える

IPO(新規株式公開)を目指す企業にとって、設立時の株価設定は、長期的な資本政策の出発点です。

IPO時には、証券取引所が定める上場基準(株主数、流通株式数など)をクリアする必要があります。

ここで重要になるのが「株式分割」という考え方です。

企業の成長に伴い1株あたりの株価が高騰すると、個人投資家が購入しにくくなり、株式の流動性が低下します。
そこで、1株を複数株に分割(例:1株→100株)することで、1株あたりの価格を下げ、売買を活発にすることがあります。

会社設立時に発行株式数を多く(1株あたりの株価を低く)設定しておくことで、この株式分割を柔軟に行うことができます

例えば、資本金1,000万円で設立する場合を比較してみましょう。

設定パターン1株あたりの株価発行株式数将来の柔軟性
高株価・少数株式5万円200株株式数が少なく、細かな比率調整や分割がしにくい。IPO前に複数回の株式分割が必要になる可能性が高い。
低株価・多数株式1万円1,000株ストックオプションの発行や、一部株式の譲渡など、細かな資本政策に対応しやすい。分割の必要性も低減できる。

このように、設立当初から発行株式数をある程度多くしておくことは、IPO準備をスムーズに進める上で非常に有効です。

IPO審査では、創業から上場に至るまでの資本政策の合理性が厳しく問われます。

設立時の株価設定が、その後の資金調達、株主構成、ストックオプションの付与状況といったすべての歴史の起点となることを認識し、長期的な視点から逆算して最適な株価と株式数を決定することが、成功への道を切り拓きます。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

これまで、会社設立時の株価設定に関する基本ルール、税務、資金調達の観点から解説してきました。

この章では、それらの知識を統合し、実務において後悔しないための最終チェックポイントをプロの視点から具体的にお伝えします。

会社設立は一度きりの重要なプロセスです。
細部まで気を配り、最適なスタートを切りましょう。

資本金と株価のバランス

会社設立における資本金、1株あたりの株価、発行株式数の間には、「資本金 = 1株あたりの株価 × 発行株式数」という明確な関係があります。
この3つの要素のバランスをどう取るかが、設立後の会社運営のしやすさを大きく左右します。

例えば、資本金を100万円に設定する場合、以下のようなパターンが考えられます。

設定パターン1株あたりの株価発行株式数メリット・デメリット
パターンA1円100万株メリット:特になし。
デメリット:株式数が多くなりすぎ、株主名簿の管理や株式譲渡の手続きが煩雑になる可能性がある。会社の価値が安く見られがち。
パターンB1万円100株メリット:株式数が管理しやすく、計算も容易。将来の増資やストックオプション発行時にも柔軟に対応できるため、最も一般的な設定
デメリット:特に大きなデメリットはない。
パターンC5万円20株メリット:株式数が少なく管理は楽。旧商法の名残で信頼性が高いと感じる人もいる。
デメリット:株式数が少ないため、株式譲渡や複数人への割り当ての際の柔軟性に欠ける場合がある。

創業者1人での設立であれば、どのパターンでも大きな問題は生じにくいですが、複数人の共同創業者や将来の資金調達を視野に入れる場合は、パターンBのように1株1万円や1株5万円といった、計算しやすく管理しやすい株価設定が実務上推奨されます。
特に、出資額に応じて株式を割り当てる際には、キリの良い株価が非常に重要です。

定款への記載と法務局での手続き

決定した株価と発行株式数は、会社設立の公式な書類に正しく記載し、法務局へ登記する必要があります。
この手続きを正確に行うことが、法的に有効な会社を設立するための必須条件です。

主なポイントは以下の通りです。

  • 定款への記載:会社の憲法ともいえる定款には、「発行可能株式総数」を必ず記載します。これは会社が将来発行できる株式数の上限であり、設立時に発行する株式数(設立時発行株式数)以上の数を設定します。設立時発行株式数や1株の払込金額(株価)も、定款または発起人の同意書によって明確に定めます。
  • 法務局への登記申請:会社設立登記申請書には、「資本金の額」と「発行済株式の総数」を記載する欄があります。これらの情報は、定款や関連書類の内容と一致していなければなりません。法務局はこれらの書類を審査し、問題がなければ登記が完了し、会社が正式に成立します。

重要なのは、一度登記した資本金や発行済株式数を変更するには、株主総会の決議や変更登記手続きが必要となり、時間と費用(登録免許税など)がかかるという点です。
そのため、設立時の株価や株式数の決定は、将来の事業展開も見据えて慎重に行う必要があります。

税理士や専門家への相談の重要性

ここまで見てきたように、会社設立時の株価決定は、法務・税務・財務戦略が複雑に絡み合う専門的な判断が求められる領域です。

安易に「1株1円でいいや」「資本金は100万円で株価は1万円にしよう」と決めてしまうと、将来思わぬトラブルに見舞われる可能性があります。

特に以下のようなケースでは、専門家への相談が不可欠です。

  • 現物出資がある場合:不動産や有価証券などで出資する場合、その財産の評価額が株価の妥当性を判断する上で極めて重要になります。不当に高い評価額を設定すると、後々税務調査で指摘されるリスクがあります。
  • 複数人で会社を設立する場合:出資比率の決定は、将来の経営権や利益配分に直結します。公平かつ円満なルール作りには、客観的な視点を持つ専門家のアドバイスが有効です。
  • 近い将来に資金調達を計画している場合:エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資を受ける際、設立時の株価(シード期のバリュエーション)は交渉の出発点となります。専門家と共に戦略的な資本政策を練ることが成功の鍵です。
  • 事業承継や相続を考慮する必要がある場合:非上場株式の評価は複雑であり、設立時の株価設定が将来の相続税額に影響を与える可能性があります。

会社設立に詳しい税理士や司法書士は、こうした潜在的なリスクを洗い出し、あなたの事業計画や将来のビジョンに最も適した株価設定を提案してくれます。

設立時に支払う専門家への報酬は、将来の大きなトラブルを未然に防ぐための「保険」であり、極めて価値の高い投資であると認識することが重要です。

会社設立時の1株あたりの株価設定は、単なる形式的な手続きではありません。

安易に決めると、みなし贈与課税などの税務リスクや、将来の資金調達、事業承継で不利になる可能性があります。

資本金の額とのバランスを考慮し、エンジェル投資家からの出資やストックオプション発行といった将来の事業展開も見据えて戦略的に決定することが重要です。

最適な株価を判断するためには、税理士や司法書士といった専門家へ早期に相談することをおすすめします。

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