株式会社の設立を決意したものの、法務局での手続きは複雑そうで、何から手をつければ良いか分からず不安に感じていませんか?
本記事を読めば、会社の基本事項の決定から公証役場での定款認証、資本金の払込、そして法務局への登記申請、設立完了後の手続きまで、株式会社設立の全プロセスを時系列で具体的に理解できます。
登記申請に必要な書類リストや、登録免許税をはじめとする費用の総額も網羅しているため、設立準備の全体像を把握し、スムーズに行動を始めることが可能になります。
結論から言えば、株式会社の設立手続きは、正しい手順とポイントさえ押さえれば、司法書士などの専門家に依頼せずとも自分自身で完遂することが可能です。
この記事をあなたの設立準備のガイドブックとして、失敗のない会社設立を実現してください。
株式会社設立における法務局の役割とは
株式会社を設立する上で、法務局は会社を法的に誕生させるための最終関門であり、最も重要な役割を担う行政機関です。
設立手続きの準備を進める中で「公証役場」との違いが分からなくなったり、具体的に何をする場所なのかイメージが湧かなかったりする方も少なくありません。
この章では、株式会社設立における法務局の核心的な役割と、関連機関との違いを分かりやすく解説します。
法務局は会社の「登記」を司る役所
法務局の最も重要な役割、それは会社の「登記」に関する手続きをすべて管轄することです。
登記とは、会社の商号(会社名)、本店所在地、事業目的、役員、資本金といった重要事項を「登記簿」という公的な帳簿に記録し、社会に公示する制度を指します。
いわば、法務局は会社の戸籍を管理する役所と考えると分かりやすいでしょう。
どれだけ念入りに事業計画を立て、資本金を用意したとしても、法務局で設立登記を完了させなければ、法律上は会社として認められません。
法務局に設立登記申請書を提出し、それが受理された日(登記申請日)が、あなたの会社の公式な「設立日」となるのです。
この登記によって、会社は法人格を取得し、社会的な信用を得て、銀行口座の開設や契約行為などが可能になります。
公証役場との違いを理解しよう
株式会社の設立手続きでは、法務局の前に「公証役場(こうしょうやくば)」という機関も関わります。
この2つの役割を混同しないことが、スムーズな手続きの第一歩です。
簡単に言えば、公証役場は「定款」という会社のルールブックが正しく作成されたことを証明する場所、法務局はその定款を含む全ての書類を審査し、会社を正式に登録する場所です。
手続きは必ず「公証役場 → 法務局」の順番で行います。
両者の違いを以下の表で確認しましょう。
| 機関名 | 主な役割 | 手続きのタイミング | 担当者 |
|---|---|---|---|
| 公証役場 | 作成した定款が正当な手続きによって作成されたことを認証する | 法務局での登記申請前 | 公証人 |
| 法務局 | 認証済みの定款を含む全書類を審査し、会社設立の登記を行う | 公証役場での定款認証後 | 登記官 |
設立手続きにおける法務局の具体的な役割
法務局は、設立登記申請を受け付けるだけでなく、その前後でいくつかの重要な機能を果たしています。
具体的に見ていきましょう。
1. 登記申請書類の審査
提出された設立登記申請書や認証済みの定款、役員の就任承諾書、資本金の払込証明書といった一連の書類に、記載漏れや形式的な誤りがないか、また会社法などの法律に違反する内容が含まれていないかを登記官が厳密に審査します。
もし不備があれば、補正(修正)を求められることになります。
2. 商業登記簿への記録
審査を無事に通過すると、登記官は会社の商号、本店所在地、役員構成などの情報を「商業登記簿」に公式に記録します。
この記録が完了した時点で、あなたの会社は法的に設立されたことになります。
これにより、誰でもその会社の基本情報を閲覧できるようになり、取引の安全性が確保されます。
3. 各種証明書の発行
登記が完了すると、その会社が法的に存在することを証明する「登記事項証明書(通称:登記簿謄本)」や、登録した会社実印の正当性を証明する「印鑑証明書」を取得できるようになります。
これらの証明書は、銀行口座の開設、融資の申し込み、行政機関への届出、重要な契約の締結など、会社運営のあらゆる場面で必要不可欠な書類です。
法務局での手続き完全ガイド 株式会社設立の流れを時系列で解説

株式会社の設立は、会社の骨格を決める準備段階から、法務局での登記申請、そして登記完了後の各種届出まで、決められた手順に沿って進める必要があります。
特に中心となる法務局での手続きは、不備があると設立日が遅れてしまう可能性もあるため、正確な理解が不可欠です。
この章では、株式会社設立の全プロセスを3つの段階に分け、時系列に沿って具体的に解説します。
第1段階 登記申請前の準備
法務局へ登記申請を行う前に、会社の内容を固め、必要な書類を揃える準備期間です。
この段階を丁寧に進めることが、スムーズな登記申請の鍵となります。
会社の基本事項の決定
まず、設立する株式会社の根幹となる基本事項を決定します。
これらは後に作成する「定款」に記載する重要な情報となります。
- 商号(会社名):会社の顔となる名前です。同一本店所在地に同じ商号の会社は登記できないため、法務局のオンラインシステム等で類似商号の調査が必要です。
- 事業目的:会社がどのような事業を行うかを具体的に定めます。適法性、営利性、明確性が求められ、将来行う可能性のある事業も記載しておくことが一般的です。
- 本店所在地:会社の住所です。自宅やレンタルオフィスも可能ですが、契約内容によっては法人登記ができない場合もあるため事前に確認しましょう。
- 資本金の額:会社法上は1円から設立可能ですが、事業の元手となる資金であり、会社の信用度にも影響します。許認可が必要な事業では、最低資本金額が定められている場合があるため、必ず確認が必要です。
- 発起人・役員の決定:会社を設立する人(発起人)と、会社の経営を行う人(取締役などの役員)を決めます。
- 事業年度:会社の会計期間(決算期)を決定します。繁忙期を避ける、消費税の免税期間を考慮するなど、戦略的に設定することが重要です。
会社実印の作成
法務局に会社の印鑑を登録するために、会社の実印(代表者印)を作成します。
この印鑑は、設立登記申請時に「印鑑届書」とともに提出し、登録が完了すると会社の正式な実印となります。
一般的に、大きさは一辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形に収まるものと定められています。
登記申請に間に合うよう、早めに準備しておきましょう。
定款作成と公証役場での認証
会社の基本事項が決定したら、それらを基に会社の憲法ともいえる「定款」を作成します。
定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」、記載がなければ効力が生じない「相対的記載事項」、任意で記載できる「任意的記載事項」があります。
作成した定款は、本店所在地を管轄する公証役場で認証を受ける必要があります。
この認証手続きを経て、定款は法的な効力を持つことになります。
なお、定款には紙で作成する「紙定款」と、PDFで作成する「電子定款」の2種類があります。
電子定款の場合、収入印紙代(4万円)が不要になるという大きなメリットがありますが、専用の機器やソフトが必要となるため、専門家に依頼するケースが一般的です。
資本金の払込
定款の認証が完了したら、発起人が定めた額の資本金を、発起人の代表者の個人口座に振り込みます。
この際、誰がいくら振り込んだか分かるように、各発起人の名義で振り込むことが重要です。
すべての払込が完了したら、その口座の通帳のコピー(表紙、裏表紙、振込が記帳されたページ)を用意し、「払込証明書」を作成します。
この払込証明書が、資本金が確かに準備されたことを証明する書類となります。
第2段階 法務局での登記申請
いよいよ、本店所在地を管轄する法務局へ株式会社の設立登記を申請します。
この申請日が会社の設立日(創立記念日)となります。
株式会社設立登記申請書の作成
法務局のウェブサイトで様式をダウンロードし、「株式会社設立登記申請書」を作成します。
商号、本店所在地、登記すべき事項、登録免許税額、添付書類の一覧などを正確に記載します。
登記すべき事項は、CD-Rなどの電磁的記録媒体に記録して提出することも可能です。
添付書類の準備
登記申請書とともに、第1段階で準備した書類や作成した書類を添付します。
認証済みの定款、役員の就任承諾書、発起人の印鑑証明書、払込証明書などがこれにあたります。
書類に不備がないか、押印漏れがないかなどを最終確認します。
登録免許税(最低15万円)を納付するための収入印紙を貼り付けた台紙も忘れずに準備しましょう。
管轄法務局への申請
作成した登記申請書と添付書類一式を、本店所在地を管轄する法務局に提出します。
管轄を間違えると受理されないため、事前に法務局のウェブサイトで必ず確認してください。
申請方法は以下の3つです。
- 窓口申請:法務局の窓口に直接持参する方法です。書類の軽微な不備であればその場で補正できる可能性があります。
- 郵送申請:法務局へ郵送する方法です。遠方の場合に便利ですが、書類が法務局に到着した日が申請日となります。書留郵便で送付するのが一般的です。
- オンライン申請(gBizID):政府が運営する「法人設立ワンストップサービス」などを利用し、インターネット経由で申請する方法です。マイナンバーカードや専用ソフトが必要ですが、自宅やオフィスから24時間申請可能です。
第3段階 登記完了後の手続き
登記申請後、法務局での審査が完了すると、株式会社の設立が正式に認められます。
しかし、会社として事業を開始するためには、まだいくつかの手続きが必要です。
登記事項証明書と印鑑カードの取得
登記が完了したら、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」と「印鑑証明書」を取得できるようになります。
これらの書類は、銀行口座の開設や各種行政機関への届出に必須です。
印鑑証明書を取得するためには、まず「印鑑カード交付申請書」を提出して印鑑カードを発行してもらう必要があります。
登記事項証明書と印鑑証明書は、今後の手続きで複数枚必要になるため、それぞれ3〜5通ほどまとめて取得しておくと効率的です。
各種行政機関への届出
法務局での手続きが完了したら、会社を運営していくために様々な行政機関への届出が必要です。
主な届出先と手続きは以下の通りです。
提出期限が定められているものも多いため、速やかに行いましょう。
| 届出先機関 | 主な届出書類 | 備考 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書など | 設立後2ヶ月以内など、提出期限が定められています。 |
| 都道府県税事務所・市町村役場 | 法人設立届出書(事業開始等申告書) | 地方税(法人住民税・法人事業税)に関する届出です。 |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届、被保険者資格取得届など | 役員報酬を支払う場合、社長1人でも社会保険の加入義務があります。 |
| 労働基準監督署 | 労働保険関係成立届、適用事業報告 | 従業員を1人でも雇用した場合に必要です。 |
| ハローワーク(公共職業安定所) | 雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届 | 従業員を1人でも雇用した場合に必要です。 |
株式会社設立で法務局に提出する書類リスト

株式会社設立の登記申請では、法務局へ複数の書類を提出する必要があります。
書類に不備があると、補正(修正)を求められ、設立日が遅れてしまう可能性もあります。
ここでは、登記申請に必要な書類を一つひとつ詳しく解説しますので、チェックリストとして活用し、漏れなく準備を進めましょう。
提出する書類は、会社の機関設計(取締役会を設置するかどうかなど)や定款の内容によって異なります。
以下は、発起人が1名以上で、取締役会を設置しない小規模な株式会社を設立する際の一般的な書類リストです。
| 書類名 | 概要 | 注意点・ポイント |
|---|---|---|
| 株式会社設立登記申請書 | 会社の基本情報を記載し、設立登記を申請するためのメイン書類。 | 法務局のウェブサイトで雛形を入手できます。 記載事項に誤りがないか細心の注意を払います。 |
| 登録免許税納付用台紙 | 登録免許税分の収入印紙を貼り付けるための台紙。 | A4の白紙を用意し、収入印紙を貼り付けます。 消印はしません。 |
| 認証済みの定款 | 公証役場で認証を受けた会社の根本規則(定款)の謄本。 | 電子定款の場合は、認証済みのPDFデータをCD-Rなどに保存して提出します。 |
| 発起人の同意書(発起人決定書) | 本店所在地や役員の選任などを発起人の同意で決定したことを証明する書類。 | 定款で具体的な本店所在地番や設立時役員を定めていない場合に必要です。 |
| 役員の就任承諾書 | 選任された取締役等が、その就任を承諾したことを証明する書類。 | 就任する役員全員分が必要です。個人の実印を押印します。 |
| 印鑑証明書 | 就任承諾書に押印された印鑑が本人のものであることを証明する書類。 | 取締役会を設置しない場合、取締役全員の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)が必要です。 |
| 払込証明書(払込みがあったことを証する書面) | 資本金が発起人の口座に確かに払い込まれたことを証明する書類。 | 代表取締役が作成し、通帳のコピーと合綴して作成します。 |
| 印鑑届書 | 会社の実印(代表者印)を法務局に登録するための書類。 | 今後の会社運営で印鑑証明書を取得するために必須です。 登記申請と同時に提出します。 |
登記申請書
株式会社設立登記申請書は、設立手続きにおける中心的な書類です。
商号、本店所在地、登記の事由、登記すべき事項、登録免許税額、添付書類の一覧などを記載します。
登記すべき事項は、法律で定められた項目を正確に記載する必要があり、間違いがあると登記が受理されません。
法務局のウェブサイトに記載例やテンプレートが用意されているため、必ず確認しながら作成しましょう。
オンライン申請の場合は、申請用総合ソフトを利用して作成します。
登録免許税納付用台紙
登録免許税は、登記手続きの際に国に納める税金です。
株式会社設立の場合、登録免許税は「資本金の額 × 0.7%」で計算されますが、この金額が15万円に満たない場合は、一律で15万円となります。
算出した税額分の収入印紙を郵便局や法務局内の印紙売場で購入し、A4サイズの白紙に貼り付けて提出します。
この白紙が「登録免許税納付用台紙」となります。収入印紙に割印や消印はしないように注意してください。
認証済みの定款
定款は「会社の憲法」とも呼ばれる重要な書類で、公証役場での認証が必須です。
紙で作成した定款の場合は、公証人による認証印が押された「謄本」を提出します。
近年主流となっている電子定款の場合は、公証人から受け取った認証済みのPDFデータをCD-RやDVD-Rに保存し、それを提出します。
電子定款の場合、紙の定款で必要となる4万円の収入印紙が不要になるという大きなメリットがあります。
発起人の同意書
「発起人決定書」とも呼ばれます。定款で本店所在地を最小行政区画(例:「東京都千代田区」)までしか定めていない場合に、具体的な地番(例:「東京都千代田区丸の内一丁目1番1号」)を決定したことを証明するためなどに作成します。
また、設立時取締役などの役員を定款で定めず、発起人の互選で決定した場合にも必要となります。
発起人全員が記名し、実印を押印します。
役員の就任承諾書と印鑑証明書
設立時に就任する取締役、代表取締役、監査役などの役員が、その役職に就くことを承諾した意思を示すための書類です。
役員となる全員分を作成し、本人が署名または記名押印します。この際、押印するのは個人の実印です。
そして、その印鑑が本物であることを証明するために、市区町村役場で取得した印鑑証明書を添付します。
印鑑証明書は発行後3ヶ月以内のものでなければなりません。
取締役会を設置しない会社では、原則として取締役全員の印鑑証明書が必要です。一方、取締役会設置会社の場合は、代表取締役の印鑑証明書のみで足ります。
払込証明書
資本金が正しく払い込まれたことを証明するための書類で、「払込みがあったことを証する書面」とも呼ばれます。
この書類は、以下の2つのパーツを合綴(ホチキスで留めて綴じ目に契印)して作成します。
- 払込証明書(会社作成):設立する会社の代表取締役が作成します。払込があった金額(資本金額)、株式数、1株の価額、日付などを記載し、会社の実印(代表者印)を押印します。
- 払込が確認できる預金通帳のコピー:発起人代表の個人口座の通帳のコピーを添付します。コピーが必要なのは、「表紙」「支店名や口座番号、名義人が記載されているページ」「各発起人からの振込が記帳されているページ」の3点です。
通帳のコピーには、該当する振込記録にマーカーなどで印を付けておくと、登記官が確認しやすくなります。
印鑑届書
設立する会社の実印(代表者印)を法務局に登録するための書類です。
この届出を行わないと、会社の印鑑証明書を発行することができず、銀行口座の開設や重要な契約手続きに支障をきたします。
登記申請書と同時に提出するのが一般的です。届書には、登録する会社実印と、届出人である代表取締役個人の実印を押印し、代表取締役個人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)を添付する必要があります。
株式会社設立の費用総点検 法務局関連の費用はいくら?

株式会社の設立には、必ず発生する「法定費用」と、状況に応じて必要となる「その他の費用」があります。
特に法務局での登記申請には登録免許税が、その前段階の定款認証には手数料がかかります。
事前に総額がいくらになるのかを正確に把握し、余裕を持った資金計画を立てることが、スムーズな会社設立の第一歩です。
ここでは、株式会社設立にかかる費用を項目ごとに詳しく解説します。
ご自身の計画に合わせて、どのくらいの費用が必要になるかシミュレーションしてみましょう。
法定費用(必ずかかる費用)
法定費用とは、法律で定められた、株式会社を設立するために必ず支払わなければならない費用のことです。
誰が手続きをしても、またどの地域で設立しても、基本的に同額が発生します。
合計で最低でも約20万円以上はかかると考えておきましょう。
定款印紙代
定款とは、会社の基本的なルールを定めた書類で、「会社の憲法」とも呼ばれます。
この定款を紙の文書で作成した場合、収入印紙を貼付する必要があり、その費用が4万円です。
しかし、電子定款を作成し、電子認証を利用すれば、この印紙代4万円は不要になります。
電子定款の作成には専用のソフトや機器が必要になるため、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的ですが、印紙代が節約できるメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
定款認証手数料
作成した定款は、その内容が法的に正当なものであることを証明してもらうため、公証役場で「認証」を受ける必要があります。
この認証手続きの際に、公証人へ支払う手数料が発生します。
手数料の額は、会社の資本金の額によって以下のように変動します。
- 資本金の額が100万円未満の場合:3万円
- 資本金の額が100万円以上300万円未満の場合:4万円
- 資本金の額が300万円以上の場合:5万円
これに加えて、認証された定款の謄本(写し)を交付してもらうための手数料が、1ページあたり250円程度かかります。
定款は通常8ページ前後になることが多いため、約2,000円が別途必要です。
登録免許税
登録免許税は、会社の設立情報を法務局に登記する際に国に納める税金です。
これは株式会社設立における法定費用の中で最も高額な項目となります。
登録免許税の金額は、以下の計算式で算出されます。
◆ 登録免許税 = 資本金の額 × 0.7%
ただし、この計算結果が15万円に満たない場合は、一律で最低15万円を納付する必要があります。
例えば、資本金が1,000万円の場合、登録免許税は7万円(1,000万円 × 0.7%)となりますが、最低額の15万円が適用されます。
資本金が約2,143万円を超えるまでは、登録免許税は15万円となります。
以下の表は、法定費用の総額をまとめたものです。
電子定款を利用することで、費用を大きく抑えられることがわかります。
| 項目 | 紙の定款の場合 | 電子定款の場合 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 定款印紙代 | 40,000円 | 0円 | 電子定款にすることで節約可能 |
| 定款認証手数料 | 約52,000円 | 約52,000円 | 資本金300万円以上の場合(手数料5万円+謄本代約2,000円で計算) |
| 登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 | 資本金の額×0.7%(最低15万円) |
| 合計 | 約242,000円 | 約202,000円 | 電子定款なら約4万円の節約 |
その他の費用
法定費用以外にも、会社の設立準備を進める中で発生する費用があります。
これらは必須ではありませんが、円滑な会社運営のために必要となる場合が多いです。
会社実印の作成費用
法務局に登記申請をする際には、会社の実印(代表者印)が必要です。
一般的には、代表者印、銀行印、角印(認印)の3本セットを作成することが多く、素材(柘、黒水牛、チタンなど)やデザインによって価格は変動しますが、相場は1万円〜3万円程度です。
印鑑証明書の取得費用
設立手続きでは、発起人および取締役に就任する全員の個人の印鑑証明書が必要となります。
市区町村の役所やコンビニのマルチコピー機で取得でき、1通あたり300円〜450円程度の手数料がかかります。
登記事項証明書・印鑑カードの取得費用
登記が完了したら、会社の存在を証明する「登記事項証明書(登記簿謄本)」と、会社実印の印鑑証明書を取得するための「印鑑カード」を取得します。
登記事項証明書は、銀行口座の開設や税務署への届出、許認可申請などで複数枚必要になります。
取得方法によって手数料が異なり、1通あたり480円〜600円です。
印鑑カードの交付手数料は無料です。
専門家(司法書士・行政書士など)への依頼費用
設立手続きを司法書士や行政書士などの専門家に依頼する場合、代行手数料(報酬)が発生します。
報酬の相場は5万円〜10万円程度が一般的です。
費用はかかりますが、専門家に依頼すれば、複雑な書類作成や手続きの手間を大幅に削減でき、ミスなく確実に設立を進められるという大きなメリットがあります。
また、多くの専門家は電子定款に対応しているため、自分で紙の定款を作成する場合と比較して、専門家報酬を支払っても総費用が安くなるケースも少なくありません。
法務局での株式会社設立に関するよくある質問

株式会社の設立手続き、特に法務局での登記申請は、初めての方にとっては疑問や不安が多いものです。
ここでは、設立準備を進める中で多くの方が抱く質問について、分かりやすく解説します。
法務局での手続きは自分でできる?
結論から言うと、株式会社設立の登記手続きは、専門家に依頼せずご自身で行うことが可能です。
書籍やインターネットで情報を集めながら、一つひとつのステップを着実に進めることで、費用を抑えて会社を設立できます。
ただし、ご自身で行う場合と、司法書士などの専門家に依頼する場合とでは、それぞれメリット・デメリットが存在します。
ご自身の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。
| 自分で手続きする場合(本人申請) | 専門家(司法書士など)に依頼する場合 | |
|---|---|---|
| メリット | 専門家への報酬が不要なため、設立費用を最も安く抑えられる。 設立手続きの全体像を実体験として深く理解できる。 | 書類作成や申請手続きをすべて任せられるため、時間と手間を大幅に削減できる。 書類の不備やミスがなく、スムーズかつ確実に登記を完了できる。 事業計画や許認可など、設立に関連する専門的なアドバイスを受けられる場合がある。 |
| デメリット | 書類の準備や法務局とのやり取りに多くの時間と手間がかかる。 書類に不備があった場合、法務局で補正(修正)手続きが必要になり、設立日が遅れる可能性がある。 定款の内容など、重要な決定事項について専門的な視点が欠けるリスクがある。 | 手続き代行のための報酬(手数料)が発生する。 |
時間に余裕があり、費用を少しでも抑えたい方や、会社設立のプロセス自体を学びたいという方は、ご自身での手続きに挑戦する価値があるでしょう。
一方で、本業の準備に集中したい方、手続きのミスを絶対に避けたい方、時間を節約したい方は、専門家への依頼を検討することをおすすめします。
登記が完了するまで何日かかる?
法務局に株式会社設立の登記申請書を提出してから登記が完了するまでの期間は、申請方法や法務局の混雑状況によって異なりますが、一般的にはおおむね1週間から2週間程度が目安です。
登記手続きにかかる日数は、以下の要因で変動します。
- 申請方法:オンライン申請は、郵送や窓口での申請に比べて処理が早く進む傾向があります。
- 法務局の混雑状況:年度末(3月)や大型連休前後、年末などは申請が集中し、通常より時間がかかることがあります。
- 書類の不備:提出した書類に不備があると、法務局から補正の連絡が来ます。修正して再提出するまでの期間、手続きはストップしてしまいます。
登記が完了した日(登記簿に会社情報が記録された日)が、法的な「会社設立日」となります。
申請書を提出した日ではない点に注意が必要です。
各法務局のウェブサイトでは「登記完了予定日」が公表されているため、申請前に確認しておくとスケジュールを立てやすくなります。
オンライン申請(gBizID)とは?
オンライン申請とは、法務局の窓口に出向くことなく、インターネット経由で登記申請手続きを完結できる「登記・供託オンライン申請システム」を利用する方法です。
このシステムを利用する際の本人確認・認証手段の一つとして「gBizID」が活用されています。
オンライン申請のメリット
オンライン申請には、従来の書面申請にはない大きなメリットがあります。
- 費用の削減:電子定款を利用してオンライン申請を行うことで、定款に貼付が必要な収入印紙代4万円が不要になります。これは設立費用を抑える上で非常に大きなメリットです。
- 時間と場所の制約がない:法務局の開庁時間(平日の日中)を気にすることなく、24時間いつでも申請が可能です。また、法務局へ出向く時間や交通費も節約できます。
- 処理の迅速化:オンライン申請は、書面申請に比べて登記完了までの期間が短縮される傾向にあります。
オンライン申請に必要な準備
オンライン申請を行うためには、事前に以下の準備が必要です。
- マイナンバーカード:申請者の電子署名を付与するために必要です。
- ICカードリーダライタ:マイナンバーカードを読み込むための機器です。
- gBizIDアカウント:gBizIDは、一つのIDとパスワードで様々な行政サービスにログインできる法人・個人事業主向けの共通認証システムです。「gBizIDプライム」のアカウントを取得します。アカウント作成には審査があり、日数がかかるため早めに手続きを開始しましょう。
- 申請用総合ソフト:法務省が提供する専用ソフトをパソコンにインストールする必要があります。
準備に少し手間はかかりますが、費用面・時間面でのメリットが大きいため、特にご自身で手続きを行う場合はオンライン申請を積極的に検討する価値があります。
まとめ
本記事では、株式会社設立における法務局での手続きについて、公証役場での定款認証から登記完了後の流れ、必要書類、費用までを網羅的に解説しました。
株式会社の設立手続きは専門的で複雑に感じられるかもしれませんが、その中心となる法務局での役割と手順を正しく理解すれば、ご自身で進めることも十分に可能です。
手続きを成功させるための結論として、最も重要なのは「事前の準備」です。
会社の基本事項の決定から定款作成、資本金の払込といった登記申請前の準備を確実に行い、登記申請書や各種添付書類を漏れなく揃えることが、スムーズな登記完了への最短ルートとなります。
本記事で紹介した「株式会社設立で法務局に提出する書類リスト」をチェックリストとしてご活用ください。
費用面では、登録免許税や定款認証手数料などの法定費用だけで約20万円以上が必要となります。
特に、電子定款を利用すれば定款印紙代の4万円を節約できるため、コストを抑えたい方はオンラインでの手続きも視野に入れると良いでしょう。
株式会社設立は、事業を始める上での大きな一歩です。
この記事で解説した情報を参考に、計画的に手続きを進めてください。
もし手続きに不安を感じたり、本業に集中するために時間を節約したい場合は、司法書士などの専門家に相談することも有効な選択肢です。
あなたの会社設立が成功裏に完了することを心より願っています。