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合同会社の定款を自分で作成!知識ゼロから分かる書き方5つのステップ

合同会社の設立準備で、最初の関門となる「定款」の作り方にお困りではありませんか。

この記事を読めば、法律の知識がゼロの方でも、合同会社の定款を自分自身で不備なく作成する全手順が分かります。

会社の基本事項の決め方から、信頼できるテンプレート(ひな形)を使った具体的な書き方、作成後のチェックリストまで、5つのステップで徹底解説。

初心者がつまずきやすい事業目的の記載方法や失敗しないための注意点も網羅しています。

結論として、定款は専門家に依頼せずとも作成可能であり、最も費用を抑える方法は4万円の収入印紙代が不要になる「電子定款」です。

この記事を参考に、スムーズな会社設立の第一歩を踏み出しましょう。

合同会社の設立を考えたとき、多くの人が「定款作成は専門家に頼まないと難しいのでは?」と思いがちです。
しかし、結論から言うと、合同会社の定款は専門的な知識がなくても自分で作成することが可能です。
特に、設立時のコストを少しでも抑えたい創業者にとって、定款の自作は非常に有効な選択肢となります。

株式会社の場合、作成した定款を公証人役場で認証してもらう必要があり、その手数料として約5万円がかかります。

一方、合同会社は公証人による定款認証が不要です。

この手続きのシンプルさが、合同会社がスピーディーかつ低コストで設立できる大きな理由の一つです。

この章では、定款を自分で作成するメリットと、具体的な費用について詳しく解説していきます。

専門家に依頼せず自分で作成するメリット

定款作成を司法書士などの専門家に依頼せず、自分自身で行うことには、費用面以外にも多くのメリットがあります。

設立準備の段階でこれらを理解しておくことは、今後の会社経営においてもプラスに働くでしょう。

  • 設立費用を大幅に削減できる
    最大のメリットは、専門家へ支払う報酬が不要になる点です。司法書士に依頼した場合、5万円から10万円程度の報酬が発生しますが、これを完全にカットできます。特に、後述する電子定款を自分で作成すれば、収入印紙代の4万円も節約できるため、設立費用を最小限に抑えられます。
  • 会社のルールへの理解が深まる
    定款は「会社の憲法」とも呼ばれる重要な書類です。事業目的、社員の役割、利益の配分方法といった会社の根幹をなすルールを、条文一つひとつを自分の頭で考えながら作成するプロセスは、会社のビジョンや運営方針を具体化し、深く理解する絶好の機会となります。この経験は、経営者としての土台を強固なものにしてくれるでしょう。
  • スピーディーに手続きを進められる
    専門家との打ち合わせや書類のやり取りには、どうしても時間がかかります。自分で作成する場合、自分のスケジュールに合わせて集中的に作業を進めることが可能です。テンプレートなどを活用すれば、比較的短時間で作成を完了させ、迅速に次の設立登記手続きへと進むことができます。

合同会社の定款作成費用を比較

定款の作成方法は、大きく分けて「自分で作成する(紙・電子)」と「専門家に依頼する」の3つのパターンがあります。

それぞれに費用が大きく異なるため、メリット・デメリットを比較検討して最適な方法を選びましょう。

作成方法収入印紙代専門家への報酬その他費用合計費用の目安
自分で紙の定款を作成40,000円0円0円40,000円
自分で電子定款を作成0円0円数千円程度(ICカードリーダーライタ等)0円~数千円
司法書士に依頼0円(電子定款の場合)50,000円~100,000円0円50,000円~100,000円

自分で紙の定款を作成する場合

パソコンで作成した定款を印刷し、製本して作成する方法です。
特別な機材は不要で、最も手軽に始められる方法と言えます。
ただし、紙の定款は印紙税法上の「課税文書」にあたるため、登記申請の際に4万円の収入印紙を貼付しなければなりません
この4万円が、紙で定款を作成する場合の最低コストとなります。

自分で電子定款を作成する場合

PDFファイルで定款を作成し、作成者が電子署名を行う方法です。
電子データは「課税文書」に該当しないため、紙の定款で必要だった収入印紙代4万円が不要になるという最大のメリットがあります。
設立費用を最も安く抑えられる方法です。
作成にはマイナンバーカードやICカードリーダーライタ、PDF編集ソフトなどが必要になりますが、近年では「マネーフォワード 会社設立」や「会社設立freee」といったクラウドサービスを利用することで、これらの機材がなくても画面の案内に従うだけで無料作成が可能です。

司法書士に依頼する場合

定款作成から設立登記まで、一連の手続きを司法書士に代行してもらう方法です。
法的な正確性が担保され、何より手間と時間を大幅に節約できるのが魅力です。
費用は司法書士事務所によって異なりますが、報酬として5万円~10万円程度が相場です。
現在ではほとんどの司法書士が電子定款で対応するため、収入印紙代4万円はかかりません。
時間や手間をかけずに、確実性を重視したい場合に最適な選択肢と言えるでしょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

合同会社の定款作成は、一見難しそうに思えるかもしれませんが、正しい手順を踏めば専門知識がなくても自分自身で完成させることができます。

この章では、会社の基本事項の決定から定款の完成まで、誰でも迷わず進められるよう5つのステップに分けて徹底的に解説します。

さあ、一緒にあなたの会社の憲法を作り上げていきましょう。

ステップ1 準備編 会社の骨格を決める6つの項目

定款の作成に取り掛かる前に、まずは会社の土台となる基本事項を決定する必要があります。

ここで決める6つの項目は、定款の最も重要な部分「絶対的記載事項」に直結します。

後から変更するには手間と費用がかかるため、慎重に検討しましょう。

商号

商号とは、会社の名前のことです。
個人事業主の「屋号」とは異なり、法務局への登記が必要な正式名称となります。
商号を決める際には、以下のルールを守る必要があります。

  • 必ず「合同会社」という文字を入れる: 会社形態がわかるように、商号の前か後ろに「合同会社」を付けます。(例:合同会社〇〇、〇〇合同会社)
  • 使用できる文字・記号: 漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(大文字・小文字)、アラビア数字が使用できます。また、「&」「’」「,」「‐」「.」「・」といった一部の記号も、字句を区切る場合に限り使用可能です。
  • 同一商号・同一本店の禁止: 同じ住所に、同じ商号の会社を登記することはできません。事前に法務局のオンライン登記情報検索サービスなどで類似商号がないか確認しておくと安心です。
  • 有名企業との混同を避ける: 誰もが知っている有名企業と間違われるような商号は、不正競争防止法に抵触する可能性があるため避けましょう。

会社の顔となる名前ですので、事業内容が伝わりやすく、覚えやすいユニークな商号を考えましょう。

事業目的

事業目的は、その会社がどのような事業を行うのかを具体的に示す項目です。
定款に記載されていない事業は原則として行えないため、将来的に展開する可能性のある事業も幅広く記載しておくことがポイントです。

事業目的を定める際は、以下の3つの原則を意識してください。

  1. 適法性: 法律に違反する内容や、公序良俗に反する内容は認められません。
  2. 営利性: 会社は利益を追求する組織であるため、ボランティア活動などの非営利な活動のみを目的とすることはできません。
  3. 明確性: 誰が読んでも事業内容を具体的に理解できるよう、分かりやすい言葉で記載する必要があります。

また、建設業や飲食業、古物商など、事業を行うにあたって許認可が必要な業種の場合は、その許認可の要件を満たす文言を事業目的に含める必要があります。
事前に管轄の行政庁に確認しておきましょう。最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」という一文(バスケットクローズ)を入れておくと、事業の範囲に柔軟性を持たせることができます。

本店所在地

本店所在地とは、会社の住所のことです。法律上の住所となり、納税地の決定や裁判の管轄などにも影響します。
本店所在地は、最小行政区画(例:東京都新宿区)までの記載でも登記可能ですが、一般的にはビル名や部屋番号まで含めた詳細な住所(地番まで)を記載します。

地番まで記載しておけば、同じ市区町村内で移転しない限り定款変更の必要がありません。
一方、最小行政区画までしか記載していない場合は、同じ市区町村内での移転であれば定款変更が不要というメリットがあります。
自宅や賃貸オフィスを本店所在地とする場合は、法人登記が可能かどうかを物件のオーナーや管理会社に必ず確認してください。

社員構成

合同会社における「社員」とは、一般的な従業員のことではなく、会社への出資者のことを指します。
株式会社でいう「株主」にあたる存在です。定款には、出資者である全社員の氏名(または名称)と住所を記載し、それぞれの出資額も明記します。

さらに、社員の中から会社の業務を執行する「業務執行社員」と、会社を代表する「代表社員」を定めます。
特に定めない場合は、原則として全社員が業務執行権と代表権を持つことになります。
誰がどのような権限を持つのかを明確に定めておくことで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。

資本金

資本金は、会社が事業を始めるための元手となる資金です。
会社法上は1円からでも設立可能ですが、資本金の額は会社の体力や信用度を示す指標の一つとなります。
設立当初の運転資金(事務所の家賃、備品購入費、当面の生活費など)を考慮し、少なくとも3ヶ月から半年程度の経費を賄える額を用意しておくのが一般的です。

また、融資を受ける際に自己資金として見られることや、許認可によっては最低資本金額が定められている場合もあるため、事業計画に合わせて適切な金額を設定することが重要です。

事業年度

事業年度とは、会社の利益などを計算する会計期間のことです。
日本の多くの企業は4月1日から翌年3月31日までとしていますが、法人の事業年度は自由に決めることができます。
例えば、設立日から1年後の前月末までとすることが多いです。

決算期をいつにするかによって、法人税などの納税タイミングが変わります。
会社の繁忙期を避けて決算業務に集中できる時期を選んだり、消費税の免税期間を最大限活用できるように設立日からできるだけ離れた月を決算月に設定したりするなど、戦略的に決定しましょう。

ステップ2 学習編 定款の記載事項を学ぶ

会社の基本事項が決まったら、次は定款に何を記載すべきかを学びましょう。

定款の記載事項は、その法的効力によって「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分類されます。

必須項目である絶対的記載事項とは

絶対的記載事項とは、その名の通り、定款に必ず記載しなければならない項目です。
一つでも欠けていると、その定款自体が無効になってしまいます。
合同会社の絶対的記載事項は以下の通りです。

項目内容
商号会社の名称。「合同会社」の文字を必ず含める。
事業目的会社が行う事業の内容。
本店所在地会社の住所。最小行政区画までの記載で可。
社員の氏名又は名称及び住所出資者全員の氏名(法人の場合は名称)と住所。
社員が有限責任社員であること合同会社の社員は、出資額の範囲内でのみ責任を負う有限責任社員であることを明記する。
社員の出資の目的及びその価額各社員が何(金銭か現物か)をいくら出資するのかを記載する。

ステップ1で決めた6つの項目が、これらの絶対的記載事項の大部分を占めていることがわかります。

任意で定められる相対的・任意的記載事項とは

絶対的記載事項以外にも、会社のルールとして定款に記載できる事項があります。
これらは「相対的記載事項」と「任意的記載事項」に分けられます。

  • 相対的記載事項:定款に記載しなければその効力が認められない事項です。定めなくても定款は有効ですが、特定のルールを設けたい場合には記載が必須となります。
    • 代表社員の定め
    • 業務執行社員の定め
    • 利益の配当に関する定め
    • 社員の退社に関する定め
    • 持分の譲渡に関する定め
  • 任意的記載事項:定款に記載しなくても法律の範囲内で自由に定められる事項ですが、会社のルールとして明確化するために記載しておくことが推奨されます。
    • 事業年度
    • 役員報酬の決定方法
    • 社員総会の招集通知時期
    • 決算公告の方法

特に社員が複数いる場合は、利益配分の割合や意思決定の方法、社員が退社する際のルールなどを相対的記載事項として定めておくことで、将来的な経営トラブルを防ぐことにつながります。

ステップ3 実践編 テンプレートを使い定款を作成する

定款に記載すべき内容を理解したら、いよいよ実際の作成作業に入ります。

ゼロからすべてを書き起こすのは大変なため、信頼できるテンプレート(ひな形)を活用するのが最も効率的で確実な方法です。

信頼できる定款ひな形の探し方

インターネット上には多くの定款テンプレートが存在しますが、情報が古かったり、内容が不正確だったりするものも少なくありません。
安心して利用できるテンプレートは、以下のような公的機関や専門家のサイトから入手しましょう。

  • 法務局:商業・法人登記の申請様式を公開しており、その中に定款の記載例も含まれています。最も信頼性が高い情報源です。
  • 日本公証人連合会:電子定款の認証を行う公証人役場の連合会サイトにも、定款の記載例やモデル定款が掲載されています。
  • 会社設立支援サービス:freee会社設立やマネーフォワード会社設立といったクラウドサービスでは、質問に答えていくだけで自社に合った定款を自動で作成してくれます。

ダウンロードしたテンプレートをそのまま使うのではなく、必ずステップ1で決めた自社の情報に書き換え、ステップ2で学んだ相対的・任意的記載事項を追加・修正してください。

合同会社の定款 記載例と書き方の解説

ここでは、一般的な合同会社の定款の記載例を条文ごとに解説します。
自社の状況に合わせて内容を調整してください。

第1章 総則
(商号)
第1条 当会社は、合同会社〇〇と称する。
解説:ステップ1で決めた商号を記載します。商号の前後に「合同会社」を付けます。
(目的)
第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1. 〇〇の企画、開発、販売
2. 〇〇に関するコンサルティング業務
3. 前各号に附帯関連する一切の事業

解説:事業目的を具体的に記載します。
将来行う可能性のある事業も列挙し、最後に「附帯関連する一切の事業」という一文を加えておきましょう。

(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都新宿区に置く。

解説:本店を置く市区町村までを記載します。
番地まで記載することも可能です。

第2章 社員及び出資
(社員の氏名、住所、出資)
第4条 当会社の社員の氏名、住所、出資及び責任は次のとおりである。
東京都渋谷区〇〇一丁目二番三号
有限責任社員 〇〇 〇〇 金100万円

解説:全社員の住所、氏名を記載し、有限責任社員であること、そして出資額を明記します。
金銭以外のもの(PC、自動車など)を出資する場合は「現物出資」としてその内容と価額を記載します。

(以下、代表社員や業務執行社員、事業年度、利益の配当など、会社のルールに合わせて条文を追加していきます。)

ステップ4 確認編 作成した定款のチェックリスト

定款の草案が完成したら、登記申請の前に必ず最終チェックを行いましょう。

ささいなミスが原因で、法務局での手続きが滞ってしまう可能性があります。

以下のリストを使って、隅々まで確認してください。

  1. 絶対的記載事項(商号、目的、本店所在地など)はすべて記載されていますか?

  2. 商号に「合同会社」という文言は正しく入っていますか?

  3. 本店所在地や社員の住所・氏名に誤字脱字はありませんか?

  4. 事業目的は、適法性・営利性・明確性の観点を満たしていますか?

  5. 許認可が必要な事業の場合、その要件を満たす文言になっていますか?

  6. 各社員の出資額は正確に記載されていますか?

  7. 相対的記載事項として定めたかったルール(代表社員の定めなど)は漏れなく記載されていますか?

  8. ページ番号は正しく振られていますか?

  9. 作成年月日は正しいですか?

可能であれば、自分以外の第三者(共同設立者など)にも読んでもらい、客観的な視点でチェックしてもらうとより安心です。

ステップ5 完成編 定款の形式を整え保管する

最終チェックが完了したら、定款を法的に有効な形式に整えます。

定款には「紙の定款」と「電子定款」の2種類があり、どちらを選ぶかによって最後の仕上げの方法が異なります。

紙の定款の場合:

  1. 作成した定款を印刷します。通常、会社保存用、法務局提出用、謄本(写し)用の3部を作成します。
  2. 全ページを順番に重ね、左側をホチキスで2箇所留めて製本します。
  3. 全社員が各ページの綴じ目にまたがるように押印(契印)します。
  4. 最終ページに全社員が記名し、実印を押印します。
  5. 法務局提出用の1部には、4万円の収入印紙を貼付する必要があります。

電子定款の場合:

  1. 作成した定款をPDFファイルに変換します。
  2. 全社員が、それぞれのマイナンバーカードなどを使って電子署名を行います。
  3. 電子署名済みのPDFファイルが、そのまま定款の原本となります。

完成した定款は、会社の最も重要な書類です。

会社保存用の原本は、金庫など安全な場所に厳重に保管しましょう。

法務局に提出した後は、登記が完了すると定款の謄本を請求できるようになります。

金融機関での口座開設や許認可申請の際に必要となるため、数部取得しておくと便利です。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

合同会社の定款を作成する方法には、伝統的な「紙の定款」と、現代的な「電子定款」の2種類が存在します。

どちらを選択するかによって、設立時にかかる費用や手間が大きく変わるため、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の状況に合った方法を選ぶことが重要です。

ここでは、両者の特徴を比較し、どちらがあなたにとって最適な選択肢なのかを詳しく解説します。

項目紙の定款電子定款
収入印紙代40,000円が必要不要
初期投資ほぼ不要(印刷代程度)必要(ICカードリーダー、PDFソフトなど)
作成の手間印刷、製本、押印など物理的な作業が多いPC上での作業が中心だが、初期設定が必要
保管・共有物理的な保管場所が必要データでの保管・共有が容易
必要なスキル特別なPCスキルは不要基本的なPC操作、電子署名の知識

手間と費用で比較する紙の定款

紙の定款は、パソコンで作成した定款の内容を印刷し、製本して作成する従来の方法です。

最大のメリットは、ICカードリーダーや専用のソフトウェアといった特別な機材や環境を準備する必要がない点です。

パソコンとプリンターさえあれば、誰でも手軽に作成に着手できます。

しかし、紙の定款には大きなデメリットがあります。
それは、印紙税法に基づき、4万円の収入印紙を貼付しなければならないという点です。
これは会社設立費用の中でも大きな割合を占めるため、コストを抑えたい方にとっては無視できない金額です。
また、印刷した書類を袋とじで製本し、社員全員が各ページに契印(割り印)を押すなど、物理的な手間と時間がかかることも覚えておく必要があります。

【紙の定款が向いている人】

  • パソコンの操作や電子証明書などの設定に不安がある方
  • 初期投資(機材購入費など)をかけずに定款を作成したい方(ただし印紙代はかかります)
  • 多少の費用や手間がかかっても、慣れた方法で確実に進めたい方

初期投資は必要だが印紙代が不要な電子定款

電子定款は、作成した定款のデータをPDFファイルに変換し、それに法務省が認める電子署名を付与して作成する方法です。

電子定款の最大のメリットは、なんといっても紙の定款で必要だった4万円の収入印紙が不要になることです。
この一点だけでも、電子定款を選ぶ価値は十分にあると言えるでしょう。

一方で、電子定款の作成にはいくつかの準備が必要です。

具体的には、以下のものを用意する必要があります。

  • マイナンバーカード(電子証明書が格納されたもの)
  • ICカードリーダーライタ(マイナンバーカードを読み込むための機器)
  • 電子署名を付与するためのPDF編集ソフト(例: Adobe Acrobatなど)

これらの機材やソフトウェアの購入に数千円から2万円程度の初期投資がかかりますが、印紙代の4万円を節約できることを考えれば、十分に元が取れる投資です。
また、一度環境を整えてしまえば、今後他の電子申請手続きにも活用できます。

製本や押印の手間がなく、データで保管できるため管理がしやすいという利点もあります。

【電子定款が向いている人】

  • 会社設立の初期費用を少しでも安く抑えたい方
  • パソコンの基本操作に慣れており、新しいツールの導入に抵抗がない方
  • ペーパーレス化を進めたい、効率的に手続きを行いたいと考えている方
会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

合同会社の定款は、テンプレートを使えば一見簡単に作成できるように思えます。
しかし、知識がないまま進めてしまうと、後々の会社経営に大きな影響を及ぼす落とし穴にはまってしまうことがあります。

ここでは、特に初心者がつまずきやすい3つのポイントと、その対策を具体的に解説します。

事業目的の書き方が曖昧になってしまう

会社の「顔」ともいえる事業目的ですが、その書き方で失敗するケースが非常に多く見られます。

将来の事業展開を考えてあれもこれもと詰め込んだり、逆に抽象的な表現にしたりすると、さまざまな問題が生じます。

事業目的が曖昧だと、融資や許認可の審査で不利になる可能性があります。

金融機関や取引先は、事業目的を見て「この会社が何で利益を上げるのか」を判断します。

内容が不明確だと、事業の将来性を疑われ、信用を得にくくなるのです。

特に注意が必要なのは、事業を行うために国や都道府県の許認可が必要なケースです。

例えば、建設業、飲食業、古物商、人材派遣業などを行う場合、定款の事業目的に、許認可の要件で定められた文言を正確に記載しなければなりません。
この記載が漏れていたり、異なっていたりすると、許認可が下りず、事業を開始できないという最悪の事態に陥ります。

事業目的を定める際は、以下の3つのポイントを必ず押さえましょう。

  • 適法性:法律や公序良俗に反する事業は記載できません。
  • 営利性:会社は利益を追求する組織であるため、ボランティア活動などは事業目的として認められません。
  • 明確性:誰が読んでも事業内容を具体的にイメージできる言葉で記載します。「各種コンサルティング業務」のような曖昧な表現ではなく、「中小企業向けの経営戦略に関するコンサルティング業務」のように具体的に記述しましょう。

将来行う可能性のある事業については、最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」という一文(バスケット条項)を入れることで、ある程度カバーできます。
しかし、これに頼りすぎず、主要な事業は明確に記載することが重要です。

迷った場合は、法務局や行政書士に相談することをおすすめします。

社員間のルール決めが不十分

合同会社は、株式会社と比べて内部のルール(定款自治)を自由に設計できるのが大きな魅力です。
しかし、設立時の良好な人間関係を前提とし、意見の対立やトラブルが発生した際のルールを定款に定めておかないと、経営が立ち行かなくなるリスクがあります。

特に、以下の項目については、設立メンバー(社員)間で十分に話し合い、定款に明記しておくべきです。

項目原則(会社法)定款で定めるべき内容の例
利益の配分原則として、出資額の割合に応じて配分されます。出資額に関わらず、特定の社員の貢献度(技術力、営業力など)を評価して利益を多く配分する、といった独自のルールを定めることができます。
配分の基準を明確に記載しましょう。
業務執行・意思決定原則として、社員全員が業務執行権を持ち、業務執行の決定は社員の過半数の一致で行います。特定の社員を「業務執行社員」や「代表社員」として定め、経営の意思決定権限を集中させることができます。
また、「重要な財産の処分」など特定の事項については「総社員の同意」を必要とする、といった加重要件を設けることも可能です。
社員の退社・持分譲渡社員は事業年度の終了時に退社できます。また、他の社員全員の承諾があれば、持分を第三者に譲渡できます。望まない人物が経営に参加することを防ぐため、持分譲渡の条件を「代表社員の承諾」や「業務執行社員の過半数の承諾」など、より具体的に定めることができます。
また、社員が死亡した場合の持分の承継についてもルールを決めておくと、相続トラブルを回避できます。

これらのルールを定めずにいると、例えば利益配分で揉めたり、一人の社員の反対で重要な意思決定ができなかったり、社員が退社する際の持分の払い戻しで資金繰りが悪化したりする可能性があります。

後々のトラブルを避けるためにも、事前にあらゆるケースを想定し、社員全員が納得するルール作りを徹底しましょう。

必要な記載事項が漏れている

定款の記載事項には「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類があります。

初心者はこの違いを十分に理解せず、テンプレートをそのまま利用した結果、自社にとって重要な項目が漏れてしまうことがあります。

特に危険なのが、「絶対的記載事項」の漏れと、「相対的記載事項」の軽視です。

絶対的記載事項は、その名の通り必ず記載しなければならない項目で、一つでも欠けると定款そのものが無効となり、会社の設立登記ができません。

商号、事業目的、本店所在地、社員の氏名・住所、社員全員が有限責任社員であること、社員の出資の目的と価額の6項目は、何度も確認してください。

一方、より注意が必要なのが「相対的記載事項」です。
これは、記載がなくても定款の効力に影響はありませんが、定款に記載しなければその効力が認められないという重要な項目です。

先ほど解説した「利益配分の割合」や「業務執行社員の定め」「持分の譲渡制限」などがこれにあたります。

もし、これらの相対的記載事項を定めなかった場合、すべて会社法の原則通りの運用となります。

例えば、「利益配分は出資額に応じて」「意思決定は社員の過半数で」といったルールが自動的に適用されます。
それが自社の実態や設立メンバーの意図と異なっていても、定款に記載がなければ主張することはできません。

定款を作成する際は、テンプレートを鵜呑みにせず、自社の経営方針に合わせて、どの相対的記載事項を盛り込むべきかを慎重に検討することが、失敗しないための鍵となります。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

合同会社の定款作成を進める中で、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。

設立手続きをスムーズに進めるための参考にしてください。

Q 定款のサンプルはどこで入手できますか

合同会社の定款のサンプル(ひな形)は、いくつかの場所で入手可能です。
ただし、どのサンプルを利用する場合でも、必ず自社の実態に合わせて内容を修正・追記する必要があります。

  • 法務局のウェブサイト
    法務局では、商業・法人登記に関する申請様式を提供しており、その中で合同会社の定款記載例も公開されています。最も信頼性が高い情報源の一つです。
  • 日本公証人連合会のウェブサイト
    株式会社の定款認証を行う公証役場の連合会ですが、ウェブサイトには合同会社を含む各種会社の定款モデルが掲載されています。専門家が作成した信頼性の高いサンプルです。
  • 会社設立支援サービスのウェブサイト
    会計ソフト会社などが提供する会社設立支援サービス(例:freee会社設立、マネーフォワード 会社設立など)では、必要項目を入力するだけで自動的に定款を作成できる機能があります。テンプレートとして利用するのも良いでしょう。
  • 行政書士・司法書士事務所のウェブサイト
    会社設立を専門とする士業事務所が、ウェブサイト上でひな形を無料で公開している場合があります。

注意点として、インターネット上で見つかるテンプレートは、情報が古かったり、特殊なケースを想定していたりすることがあります
必ず複数のサンプルを比較検討し、自社の事業内容や社員構成に最適な形にカスタマイズすることが重要です。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

Q 事業目的はいくつまで記載できますか

法律上、事業目的の数に上限はありません。いくつ記載しても法的には問題ありません。
しかし、あまりにも多くの事業目的を羅列すると、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

  • 会社の事業内容が不明確になる
    事業目的が多すぎると、第三者から見て「一体何をしている会社なのか」が分かりにくくなり、信用度が低下する恐れがあります。
  • 融資審査で不利になる可能性がある
    金融機関から融資を受ける際、事業内容の一貫性や専門性が見えにくく、審査に影響を与えることがあります。
  • 許認可申請に影響が出る
    許認可が必要な事業を行う場合、定款の事業目的に特定の文言が含まれている必要があります。関連性のない目的が多いと、許認可の審査に影響する可能性も考えられます。

そのため、現在行っている事業と、将来的に(2〜3年以内に)展開する可能性のある事業に絞り、10個程度にまとめるのが一般的です。
事業目的は後からでも変更・追加が可能なので、設立時点では必要最小限にしておくのが賢明です。

Q 作成した定款はいつ変更できますか

合同会社の定款は、設立後いつでも変更することが可能です。
事業の拡大や状況の変化に合わせて、柔軟に内容を見直すことができます。

定款を変更するには、原則として「総社員の同意」が必要です。
手続きの主な流れは以下の通りです。

  1. 総社員の同意を得る
    定款の変更内容について、全社員の同意を取り付けます。その証拠として「総社員の同意書」を作成します。
  2. 変更登記申請を行う(必要な場合)
    商号、事業目的、本店所在地、資本金、社員の氏名など、登記事項に関わる内容を変更した場合は、変更があった日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局で変更登記申請を行う必要があります。この申請には、登録免許税(原則3万円)がかかります。

登記事項以外の変更(例:事業年度の変更、利益の配当に関する規定など)の場合は、総社員の同意書を作成し、会社で保管しておけばよく、法務局への登記申請は不要です。

Q 合同会社の定款は公証役場での認証が必要ですか

いいえ、合同会社の定款は、株式会社の定款と異なり、公証役場での認証手続きは不要です。

株式会社を設立する場合、作成した定款が法的に有効であることを証明してもらうために、公証役場で認証を受ける必要があり、手数料として3万円〜5万円がかかります。
しかし、合同会社はこの手続きが一切不要なため、その分の費用と時間を節約できます。
これは合同会社を設立する大きなメリットの一つです。

ただし、認証は不要ですが、作成した定款は会社設立登記の際に、登記申請書などの必要書類と一緒に法務局へ提出する必要があります。

Q 資本金は1円でも設立できますか

はい、会社法上は、資本金1円から合同会社を設立することが可能です。

しかし、資本金の額は会社の体力や信用度を示す指標となるため、1円での設立には注意が必要です。
資本金が極端に少ないと、以下のようなデメリットが考えられます。

  • 社会的信用を得にくい
    取引先や金融機関から見て、事業を継続する体力がないと判断され、契約や融資で不利になる可能性があります。
  • 運転資金が不足する
    設立直後は売上がすぐには立たないことが多いため、資本金が少ないと家賃や備品購入費などの初期費用を支払えず、すぐに資金ショートに陥るリスクがあります。

適切な資本金額に決まりはありませんが、一般的には「設立当初の運転資金(3ヶ月〜6ヶ月分)+事業に必要な初期投資額」を目安に設定することが推奨されます。
許認可が必要な事業では、最低資本金額が定められている場合もあるため、事前に確認が必要です。

Q 定款を作成した後、どこに提出・保管すればよいですか

作成した定款の取り扱いは、提出と保管の2つの側面があります。

取り扱い場所・方法
提出会社設立登記を申請する際に、本店所在地を管轄する法務局へ他の必要書類と一緒に提出します。
電子定款の場合はCD-Rなどに保存して提出するか、オンラインで申請します。
保管作成した定款の原本(原始定款)は、会社の本店に備え置く義務があります。
紙の定款であれば原本そのものを、電子定款であれば電磁的記録(PDFファイルなど)を出力して書面にしたものを保管します。
金融機関での口座開設や融資申込、各種許認可申請の際に定款のコピーの提出を求められるため、いつでも取り出せるように大切に保管してください。

定款を変更した場合は、変更後の最新の定款(現行定款)も同様に本店に備え置く必要があります。

合同会社の定款は、専門家に依頼せずとも、この記事で解説した5つのステップに沿って進めることで、知識がない方でもご自身で作成することが可能です。

自分で作成することで、設立費用を大幅に抑えられるという大きなメリットがあります。

定款作成で最も重要なのは、商号や事業目的といった会社の基本事項を事前にしっかりと決めておくことです。
特に、法律で定められた「絶対的記載事項」は漏れなく記載する必要があります。

法務局のウェブサイトなどで提供されている信頼できるテンプレート(ひな形)を活用することで、ミスなく効率的に作業を進められるでしょう。

作成方法には紙と電子の2種類がありますが、結論として、コストを最小限に抑えたいのであれば「電子定款」がおすすめです。

専用ソフトの導入費用はかかりますが、紙の定款で必要となる収入印紙代4万円が不要になるため、トータルコストを削減できます。

本記事で解説したポイントや注意点を参考に、ぜひご自身での合同会社設立に挑戦してみてください。

スムーズな会社設立の第一歩となる、適切な定款が完成することを願っています。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
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