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いきなり法人化は最強の節税?個人事業主との比較でわかる最適なタイミングとは

「いきなり法人化」は本当に得なのでしょうか?

事業開始時から法人を選ぶことで、高い節税効果や社会的信用を得られる一方、設立費用や社会保険の負担といったデメリットもあります。

この記事を読めば、個人事業主との違いや、法人化すべき最適なタイミングが明確にわかります。

年間所得800万円が一つの目安。

後悔しないための判断基準を、具体的なシミュレーションを交えて徹底的に解説します。

「いきなり法人化」とは、その名の通り、個人事業主やフリーランスとしての活動期間を経ることなく、事業を開始する最初の段階から法人(会社)を設立することを指します。

従来、起業のステップとしては、まず個人事業主としてスタートし、売上や利益が一定規模に達した段階で法人化する「法人成り」が一般的でした。
しかし、事業内容や将来の展望によっては、最初から法人としてスタートする「いきなり法人化」が最適な選択となるケースも増えています。

例えば、以下のような場合には「いきなり法人化」が検討されます。

  • 事業開始当初から大きな売上や利益が見込める場合
  • 法人でなければ契約できない大企業との取引を予定している場合
  • 融資など多額の資金調達を前提に事業を始める場合
  • 建設業や介護事業など、許認可の取得に法人格が必要な事業を行う場合
  • 複数人の仲間と共同で事業を立ち上げる場合

このように、事業のスタートラインにおいて社会的信用や資金調達の有利性が求められる際に、「いきなり法人化」は強力な選択肢となるのです。

法人成りとの違い

「いきなり法人化」を理解する上で、よく比較される「法人成り」との違いを明確にしておくことが重要です。

「法人成り(ほうじんなり)」とは、個人事業主として行ってきた事業を、新たに設立した会社に引き継がせる形で事業形態を変更することを指します。

両者の最も大きな違いは、法人を設立する前に個人事業としての実績期間があるかどうかです。

以下の表で、両者の違いを整理してみましょう。

比較項目いきなり法人化法人成り
定義個人事業主を経ずに、最初から法人を設立して事業を開始すること。個人事業主として運営していた事業を、法人に移行すること。
設立前の事業形態なし(ゼロからのスタート)個人事業主
主な目的・社会的信用の獲得
・大規模な資金調達
・許認可の取得
・節税対策(所得の増加に伴う税負担の軽減)
・事業拡大への備え
手続き上の特徴純粋な会社設立手続きのみで、比較的シンプル。会社設立手続きに加え、個人事業の資産・負債の引き継ぎや、個人事業の廃業手続きなどが必要になる場合がある。

このように、「いきなり法人化」は事業のスタートダッシュを重視する戦略である一方、「法人成り」は事業の成長に合わせて形態を最適化していく戦略と言えます。

どちらが優れているというわけではなく、ご自身の事業計画や将来のビジョンに合わせて選択することが肝心です。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

個人事業主を経ずに最初から会社を設立する「いきなり法人化」。
この選択には、事業をスムーズに成長させるための多くのメリットが隠されています。
特に節税効果や社会的信用の向上は、スタートアップ期の事業者にとって大きなアドバンテージとなるでしょう。

ここでは、いきなり法人化がもたらす5つの具体的なメリットを詳しく解説します。

メリット1 節税効果が高い

いきなり法人化を検討する最大の理由として挙げられるのが、個人事業主よりも高い節税効果を期待できる点です。

個人の所得にかかる「所得税」と、法人の所得にかかる「法人税」の税率構造の違いや、経費として認められる範囲の広さを活用することで、手元に残る資金を最大化できる可能性があります。

法人税と所得税の税率差を活用できる

個人事業主の所得に課される所得税は、所得が増えるほど税率も高くなる「累進課税」が採用されています。
所得が4,000万円を超えると、住民税と合わせて最大55%もの税率になります。
一方、法人税は所得額に応じて税率が変わりますが、資本金1億円以下の中小法人の場合、所得800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%と、所得税に比べて上限が低く設定されています。

この税率差により、ある一定の所得(一般的に800万円〜1,000万円が目安)を超えると、法人の方が税負担を抑えられるのです。
事業開始当初から高い収益が見込める場合、いきなり法人化することで初年度から大きな節税メリットを享受できます。

課税所得金額個人の所得税・住民税 合計税率法人実効税率(中小法人)
300万円約20%約25%
500万円約30%
800万円約33%約34%
1,000万円約43%
2,000万円約50%

※上記は概算値であり、各種控除や事業税の損金算入などを考慮していないため、あくまで目安としてご覧ください。

役員報酬で給与所得控除が使える

法人化すると、経営者自身に「役員報酬」という形で給与を支払うことができます。
この役員報酬は個人の給与所得となり、税金の計算上、収入から一定額を差し引ける「給与所得控除」が適用されます
これは、いわばサラリーマンの「みなし経費」のようなもので、所得額に応じて最低でも55万円が控除されます。

個人事業主の場合、事業所得から経費を差し引いた金額がそのまま課税対象となり、給与所得控除は使えません。
法人化して自身に役員報酬を支払うことで、法人側では役員報酬を経費(損金)にでき、個人側では給与所得控除を使えるため、二重の節税効果が期待できるのです。

経費にできる範囲が広がる

法人化すると、個人事業主よりも経費として認められる範囲が広がります。
これにより、課税対象となる所得をさらに圧縮することが可能です。

  • 社宅制度の活用
    自宅兼事務所の場合、個人事業主では家賃や光熱費を事業で使う割合(家事按分)に応じて経費にしますが、法人の場合は会社名義で物件を借り上げ、役員社宅とすることで、家賃の大部分(一般的に50%以上)を会社の経費に計上できる場合があります。
  • 生命保険料
    個人事業主では生命保険料控除(所得控除)に上限がありますが、法人が契約者となる生命保険(養老保険など)は、保険の種類や契約形態によって支払保険料の全額または一部を損金として処理できます。役員の死亡退職金や弔慰金の財源確保にもつながります。
  • 出張手当(日当)
    出張旅費規程を整備すれば、役員や従業員に対して非課税で出張手当を支給できます。受け取った個人は所得税がかからず、支払った会社側は全額を経費にできるため、節税しながら実質的な手取りを増やすことができます。

家族への給与支払いがしやすい

家族を従業員として雇用する場合、法人の方が給与を支払いやすくなります。
個人事業主が家族に給与を支払うには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、その業務内容や労働時間など厳しい要件を満たす必要があります。

一方、法人の場合は、家族を役員や従業員とし、その働きに見合った常識的な範囲の給与を支払うことで、経費として計上できます
これにより、所得を家族に分散させ、世帯全体で見たときの所得税や住民税の負担を軽減する「所得分散効果」が期待できます。

退職金の準備ができる

法人であれば、経営者自身や家族従業員のために退職金を準備することができます。
個人事業主には退職金という概念はなく、老後の資金は小規模企業共済などで備えるのが一般的です。

役員退職金は、税制上非常に優遇されています。
退職所得控除という大きな控除枠があり、さらに控除後の金額の2分の1が課税対象となるため、給与や役員報酬として受け取るよりも税負担を大幅に抑えることが可能です。
将来の勇退に向けた資産形成として、非常に有効な手段となります。

メリット2 社会的信用が向上する

法人化は、個人事業主と比較して社会的信用度が格段に向上します。

法人は法務局に登記されており、商号(会社名)、本店所在地、役員などの情報が公開されているため、取引相手は会社の存在を客観的に確認できます。
この透明性が信用の基盤となります。

特に、大企業や官公庁との取引では、契約の条件として「法人であること」を求められるケースが少なくありません

いきなり法人化することで、事業開始当初から大きなビジネスチャンスを掴める可能性が広がります。
また、オフィスを借りる際の入居審査や、人材を採用する際の求職者からの見え方も、法人である方が有利に働くことが一般的です。

メリット3 資金調達で有利になる

事業を拡大していく上で、資金調達は避けて通れない課題です。
この点においても、法人は個人事業主よりも有利な立場にあります。

金融機関は融資の審査において、事業の透明性や財務状況の信頼性を重視します。

法人は会計処理が法律で厳格に定められており、作成される決算書の信頼性が高いと判断されます。
また、事業用の資産と個人の資産が明確に分離されているため、経営状況を把握しやすい点も評価されます。
これにより、日本政策金融公庫の制度融資や、民間の金融機関からのプロパー融資を受けやすくなります

さらに、株式会社であれば、第三者から出資を募る「エクイティ・ファイナンス」も可能になります。

将来的にベンチャーキャピタルからの出資を受けたい、事業を大きくスケールさせたいと考えている場合、法人格、特に株式会社であることは必須の条件と言えるでしょう。

メリット4 決算月を自由に設定できる

個人事業主の事業年度は、法律によって1月1日から12月31日までと定められており、変更することはできません。
そのため、確定申告の時期は2月中旬から3月中旬に集中し、多くの事業者が繁忙期を迎えます。

一方、法人は設立時に事業年度(決算月)を自由に設定することができます

例えば、自社の繁忙期を避けて決算月を設定すれば、落ち着いて決算業務や納税準備に取り組むことが可能です。
また、売上が最も大きくなる月の直後を決算月に設定すれば、利益を確定させて納税予測を立てやすくなるなど、戦略的な事業運営が可能になります。

メリット5 有限責任でリスクを限定できる

事業を行う上で、万が一の事態に備えることは非常に重要です。

個人事業主は「無限責任」を負います。これは、事業上の借入金や損害賠償などの債務について、事業用の資産だけでなく、個人の預貯金や不動産など、すべての個人資産をもって返済する義務があることを意味します。

それに対して、株式会社や合同会社といった法人の出資者(株主や社員)は「有限責任」です。
これは、会社の債務に対して、原則として自分が出資した金額の範囲内でのみ責任を負うというものです。

事業が失敗して会社が倒産した場合でも、個人の資産まで差し押さえられることはありません(経営者が個人保証をしている場合を除く)。
この有限責任により、事業上のリスクを限定し、安心して新しい挑戦に踏み出すことができるのです。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

「いきなり法人化」は節税効果などの大きなメリットがある一方で、個人事業主にはないデメリットや注意点も存在します。

メリットだけに目を向けて安易に法人化を進めると、「こんなはずではなかった」と後悔する可能性があります。

ここでは、法人化を検討する上で必ず理解しておくべき4つのデメリットを具体的に解説します。

デメリット1 設立と維持に費用がかかる

個人事業主であれば、税務署に開業届を提出するだけで費用はかかりません。
しかし、法人の場合は設立時と事業の維持、両方の局面でコストが発生します。
特に、事業が軌道に乗る前の段階では、これらの費用が大きな負担となる可能性があります。

会社設立時の初期費用

会社を設立するには、法務局への登記申請が必要であり、その際に法定費用がかかります。
設立する会社形態(株式会社か合同会社か)によって費用は異なります。
一般的に、株式会社の方が合同会社よりも設立費用は高くなります。

以下は、会社設立にかかる法定費用の目安です。

費用項目株式会社合同会社備考
定款用収入印紙代40,000円40,000円電子定款の場合は不要
定款認証手数料30,000円~50,000円0円公証役場で支払う手数料
登録免許税最低150,000円
(資本金の0.7%)
最低60,000円
(資本金の0.7%)
法務局で支払う税金
合計(電子定款の場合)約20万円~約6万円~

これらの法定費用に加えて、司法書士や行政書士などの専門家に設立手続きを依頼する場合は、別途5万円から10万円程度の報酬が発生します。
個人事業主の開業が無料であるのに対し、法人設立には最低でも数万円から数十万円の初期投資が必要になることを覚えておきましょう。

赤字でも発生する法人住民税

法人には、所得(利益)に対して課税される法人税のほかに、法人住民税の支払い義務があります。
法人住民税は「法人税割」と「均等割」の2つで構成されています。

問題となるのが「均等割」です。
これは、会社の所得が赤字であっても、資本金の額や従業員数に応じて課税される税金です。
つまり、事業で全く利益が出ていなくても、会社が存在する限り納税の義務が発生し続けます。

自治体によって金額は異なりますが、資本金1,000万円以下、従業員50人以下の最も小規模な会社でも、最低で年間7万円程度の法人住民税(均等割)を納めなければなりません。
これは、法人を維持していくための固定費と言えるでしょう。

デメリット2 社会保険への加入が義務になる

法人を設立すると、たとえ社長一人の会社であっても、健康保険と厚生年金保険(総称して社会保険)への加入が法律で義務付けられています。

個人事業主の場合は、常時雇用する従業員が5人未満であれば社会保険への加入は任意ですが、法人は強制加入となります。

社会保険料は、役員報酬の金額に応じて決定され、その保険料を会社と役員個人で半分ずつ負担(労使折半)します。

役員報酬の額によっては、個人事業主時代に支払っていた国民健康保険料と国民年金保険料の合計額よりも、社会保険料の自己負担額の方が高くなるケースも少なくありません。

もちろん、厚生年金に加入することで将来受け取る年金額が増えるというメリットはありますが、短期的なキャッシュフローで見ると、会社の負担と個人の手取り額の減少につながる大きな要因となります。

デメリット3 事務手続きや経理処理が複雑になる

法人は個人事業主と比較して、会計処理や税務申告、法務手続きが格段に複雑になります。

  • 会計・税務: 個人事業主の青色申告(簡易簿記も可)とは異なり、法人は正規の簿記の原則(複式簿記)に従った厳格な会計処理が求められます。決算書の作成や法人税申告書の作成は非常に専門的で、多くの場合は税理士に依頼することになります。その結果、税理士への顧問料や決算申告料といった新たなコストが発生します。
  • 法務手続き: 会社を運営していく中で、役員の変更(改選)、本店の移転、事業目的の変更などがあった場合、その都度、法務局で変更登記の手続きが必要となり、登録免許税などの費用と手間がかかります。

これらの複雑な事務手続きを自力で行うのは非常に困難であり、専門家への依頼が事実上必須となるため、その分のランニングコストも事業計画に織り込んでおく必要があります。

デメリット4 会社の資金を自由に使えない

個人事業主の場合、事業で得た利益はすべて事業主個人のものです。事業用の口座から生活費を引き出すことも比較的自由に行えます。
しかし、法人の場合、会社と個人は法律上別人格として扱われます。

そのため、会社の口座にあるお金はあくまで「会社のもの」であり、社長が個人的な目的で自由に引き出して使うことはできません

社長が会社からお金を受け取るには、「役員報酬」という給与の形で、決められた日に決められた金額を受け取るのが基本です。

この役員報酬は、原則として事業年度の開始から3ヶ月以内に決定し、その事業年度中は金額を変更できません(定期同額給与)。
もし事業の状況が変化しても、柔軟に報酬額を変えることは税務上認められにくく、資金繰りの自由度が低くなる可能性があります。

個人的な出費を会社の経費として計上することは、税務調査で指摘されるリスクが非常に高く、絶対に行うべきではありません。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

「いきなり法人化」という選択肢が頭に浮かんだとき、多くの人が「本当に自分にとって最適なのだろうか?」という疑問を抱くはずです。

メリット・デメリットを理解した上で、現在の事業規模や将来の展望と照らし合わせ、個人事業主と比較検討することが不可欠です。

ここでは、「税金」「費用と手間」「社会的信用と責任」という3つの重要な観点から、両者を徹底的に比較し、あなたがどちらを選ぶべきかの判断材料を提供します。

税金面での比較シミュレーション

事業を行う上で最も気になるのが税金の問題です。個人事業主と法人では、課される税金の種類や計算方法が根本的に異なります。
特に、所得(利益)が大きくなるほど、法人の方が税負担を抑えられるケースが多くなります。

個人事業主の所得には、所得額に応じて税率が上がる「累進課税」が適用される所得税がかかります。
一方、法人の所得には、基本的に一定の税率である法人税が課されます。
この税率構造の違いが、節税効果の分かれ目となります。

ここでは、課税所得金額別に、個人事業主と法人(役員報酬を所得の7割と仮定)のおおよその税負担額をシミュレーションしてみましょう。

課税所得金額個人事業主の税負担
(所得税+住民税+事業税)
法人の税負担
(法人税等+役員報酬にかかる税)
どちらが有利か
500万円約125万円約110万円法人の方がやや有利
800万円約240万円約200万円法人の方が有利
1,000万円約330万円約260万円法人の方が大幅に有利

※上記はあくまで簡易的なシミュレーションです。社会保険料や各種控除、消費税などは考慮しておらず、実際の税額は個々の状況によって大きく異なります。

この表からもわかるように、所得が500万円を超えたあたりから法人の税負担が軽くなりはじめ、800万円を超えると、その差は顕著になります。
これは、法人では役員報酬に「給与所得控除」が適用されることや、所得税よりも法人税の最高税率が低く設定されているためです。

ご自身の事業の利益見込みを元に、どちらが有利になるかを検討することが重要です。

費用と手間の比較

税金面でメリットがあっても、設立や維持にかかるコストと事務的な手間が増大しては元も子もありません。

事業を運営していく上での現実的な負担を比較してみましょう。

項目個人事業主法人(株式会社の例)
設立費用原則0円(開業届を提出するのみ)約20万円~25万円(定款認証、登録免許税など)
維持費用なし(利益が出なければ税金はかからない)最低でも年7万円程度(赤字でも法人住民税の均等割が発生)
会計・税務比較的シンプル。会計ソフトで自力対応も可能(青色申告)複雑。決算申告は税理士への依頼が一般的(別途費用発生)
社会保険従業員5人未満は任意加入(国民健康保険・国民年金)社長1人でも強制加入(健康保険・厚生年金)。保険料の半額を会社が負担。
事務手続き確定申告がメイン。決算申告、年末調整、源泉徴収、社会保険手続きなど多岐にわたる。

このように、費用と手間の面では、圧倒的に個人事業主の方が負担は軽いと言えます。
特に、法人は赤字であっても毎年必ず発生する「法人住民税の均等割」や、負担の大きい「社会保険への強制加入」が大きな違いです。
これらのランニングコストを賄えるだけの安定した収益が見込めるかどうかが、法人化を判断する上での重要なポイントになります。

社会的信用と責任範囲の比較

事業の成長を目指す上で、お金や手間だけでは測れない「信用」と「責任」の問題も非常に重要です。

法人化することで、ビジネスの可能性が大きく広がる場合があります。

項目個人事業主法人
社会的信用個人に依存。取引先や融資審査で不利になることがある。登記情報が公開されており、客観的な信用度が高い。大企業との取引や資金調達、人材採用で有利。
責任の範囲無限責任
事業上の負債は、個人の全財産で返済する義務がある。
有限責任
原則として、出資額の範囲内での責任。個人の財産は守られる。(※代表者が連帯保証人になる場合を除く)
事業承継個人の死亡により事業資産が相続財産となり、手続きが複雑になる場合がある。株式の譲渡や相続により、スムーズな事業承継が可能。

法人格を持つということは、法務局に登記され、会社情報が公に開示されることを意味します。
これにより、個人事業主よりも高い社会的信用を得ることができ、金融機関からの融資や大手企業との取引において有利に働くことが多くなります。
また、優秀な人材を確保する際にも、社会保険が完備されている法人の方が魅力的に映るでしょう。

さらに、最も大きな違いの一つが「責任の範囲」です。

個人事業主は事業で失敗し負債を抱えた場合、個人の貯金や家などの全財産を投げ打って返済する「無限責任」を負います。
一方、法人は出資額の範囲で責任を負う「有限責任」が原則です。万が一の際のリスクを限定できることは、挑戦的な事業展開を考える上で大きな安心材料となります。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

「いつ法人化するのがベストなのか?」これは多くの起業家が抱える悩みです。タイミングを誤ると、せっかくのメリットを活かせないばかりか、かえってコストが増えてしまう可能性もあります。

ここでは、税金面や事業展開の観点から、いきなり法人化を検討すべき最適なタイミングを見極めるための3つの具体的な基準を解説します。

基準1 年間所得が800万円を超える見込みがある

いきなり法人化を検討する最も代表的な基準が、事業から得られる所得(売上から経費を差し引いた利益)の金額です。

一般的に、年間所得が800万円から900万円を超えるあたりが、個人事業主よりも法人の方が税負担を抑えられる損益分岐点と言われています。

これは、個人事業主に課される「所得税」と、法人に課される「法人税」の税率構造の違いによるものです。

所得税は、所得が増えるほど税率も高くなる「累進課税」が採用されています。
一方、法人税は所得金額に応じて税率が変わりますが、一定の所得までは税率が固定されています(中小法人の場合)。

以下の表は、所得税と法人税の税率を比較したものです。

所得が増えるにつれて、所得税率が法人税率を上回っていくのがわかります。

課税所得金額所得税率(個人)法人税率(法人・中小企業)
195万円以下5%年800万円以下の部分:15%
195万円超 330万円以下10%
330万円超 695万円以下20%
695万円超 900万円以下23%
900万円超 1,800万円以下33%年800万円超の部分:23.2%
1,800万円超 4,000万円以下40%
4,000万円超45%

表を見ると、課税所得が900万円を超えると所得税率は33%となり、法人税率の23.2%を大きく上回ります。
この税率が逆転するポイントが、法人化による節税効果が高まるタイミングなのです。

もちろん、実際には住民税や事業税、役員報酬の額や給与所得控除なども考慮する必要があるため、あくまで一つの目安ですが、安定して800万円以上の所得が見込めるようになったら、法人化を具体的に検討し始めるべきと言えるでしょう。

基準2 消費税の課税事業者になるタイミング

消費税も、法人化のタイミングを判断する上で非常に重要な要素です。

個人事業主は、前々年の課税売上高が1,000万円を超えると、その年から消費税の「課税事業者」となり、消費税を納める義務が生じます。

しかし、新規に設立された法人(資本金1,000万円未満)は、原則として設立から最大2年間、消費税の納税が免除されます。
この制度を活用することで、大きな節税効果が期待できるのです。

具体的には、以下のようなタイミングでの法人化が考えられます。

  • 個人事業主としての売上が1,000万円を超えた年の翌年末まで
  • 個人事業主として課税事業者になる直前のタイミング

例えば、個人事業主として開業し、2年目に売上が1,000万円を超えたとします。
この場合、4年目から課税事業者になります。もし、3年目の終わりに法人を設立すれば、そこから新たに最大2年間(4年目、5年目)は消費税の免税事業者でいられる可能性があります。
つまり、個人事業主としての免税期間と、法人としての免税期間を最大限に活用できるのです。

また、2023年10月から始まったインボイス制度も考慮に入れる必要があります。

取引先からインボイス(適格請求書)の発行を求められ、課税事業者になることを選択する場合、そのタイミングで法人化し、消費税の免税メリットを享受しつつ事業基盤を強化するという戦略も有効です。

基準3 融資や大きな取引を予定している

税金面だけでなく、事業の成長戦略から法人化のタイミングを見極めることも重要です。
特に、大規模な資金調達や、大企業との取引を視野に入れている場合は、法人化が大きなアドバンテージとなります。

資金調達(融資)を有利に進めたいとき

事業を拡大するためには、設備投資や人材採用などでまとまった資金が必要になることがあります。
日本政策金融公庫や民間の金融機関から融資を受ける際、一般的に個人事業主よりも法人の方が社会的信用度が高いと判断され、審査で有利に働く傾向があります。

法人は、法務局への登記が義務付けられており、会計処理も個人事業主より厳格です。
この透明性の高さが、金融機関にとって「事業の実態が把握しやすく、計画性がある」という安心材料になります。
将来的に大きな融資を受けて事業をスケールさせたいと考えているなら、その計画が具体化する前に法人化を済ませておくのが得策です。

大企業や官公庁との取引を目指すとき

BtoBビジネスを展開している場合、取引先の信用は極めて重要です。
企業によっては、与信管理やコンプライアンスの観点から、取引相手を法人に限定しているケースが少なくありません
個人事業主であるというだけで、大きなビジネスチャンスを逃してしまう可能性があるのです。

もし、あなたの事業が特定の業界の大手企業や官公庁をターゲットにしているのであれば、法人格を持っていることは、商談のテーブルにつくための「入場券」とも言えます。
大きな契約を獲得して事業を飛躍させたいと考えているなら、その機会を逃さないためにも、早期の法人化を検討する価値は十分にあるでしょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

いきなり法人化を決意したら、次はいよいよ会社設立の手続きです。

手続きには多くのステップがあり複雑に感じるかもしれませんが、一つひとつ着実に進めれば誰でも会社を設立できます。

ここでは、会社形態の選択から設立後の届出まで、具体的な手続きと流れを分かりやすく解説します。

株式会社と合同会社どちらを選ぶか

法人化するにあたり、まず選択するのが「株式会社」と「合同会社」のどちらの形態にするかです。

それぞれにメリット・デメリットがあり、事業の規模や将来のビジョンによって最適な選択は異なります。

社会的信用度や資金調達を重視するなら株式会社、設立費用や運営の自由度を重視するなら合同会社が選ばれる傾向にあります。

両者の違いを比較表で確認し、ご自身の事業に合った形態を選びましょう。

比較項目株式会社合同会社
設立費用(法定費用)約20万円~(定款認証手数料、登録免許税など)約6万円~(登録免許税のみ)
社会的信用度高い。一般的に最も認知されている会社形態。株式会社に比べるとやや低いが、近年は認知度向上。
資金調達の方法融資、株式発行(増資)による出資など多様。融資、社員の追加出資が中心。株式発行は不可。
意思決定株主総会での決議が必要(所有と経営が分離)。原則として、出資者である全社員の同意が必要(所有と経営が一致)。
利益配分出資比率(株式の保有数)に応じて配当。定款で自由に決められる(出資比率と異なる配分も可能)。
役員の任期原則2年(最長10年まで伸長可能)。任期ごとに登記が必要。任期なし。登記の更新は不要。

将来的に上場を目指したり、外部から広く出資を募りたい場合は株式会社が適しています。

一方、個人事業主の延長線上でスモールビジネスを始めたい、コストを抑えて迅速に設立したいという場合は合同会社が有力な選択肢となるでしょう。

会社設立の基本的なステップ

会社設立の手続きは、準備から登記申請、設立後の届出まで多岐にわたります。

ここでは、一般的な会社設立の流れをステップごとに解説します。

抜け漏れがないように、しっかりと確認しながら進めましょう。

  1. 会社の基本事項の決定
    まず、設立する会社の骨格を決めます。商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金の額、役員構成、事業年度(決算月)などを具体的に決定します。特に事業目的は、将来行う可能性のある事業も記載しておくと、後々の定款変更の手間を省けます。
  2. 印鑑の作成
    会社の実印(代表者印)、銀行印、角印(認印)の3種類を作成するのが一般的です。特に会社実印は、法務局への登記申請に必要となるため、早めに準備しておきましょう。
  3. 定款の作成と認証
    会社のルールブックである「定款」を作成します。株式会社の場合は、作成した定款を公証役場に持ち込み、認証を受ける必要があります。合同会社の場合は定款の作成は必要ですが、公証役場での認証は不要です。
  4. 資本金の払込み
    発起人(出資者)個人の銀行口座に、定款で定めた資本金を振り込みます。この時点ではまだ会社の銀行口座は開設できないため、個人口座を使用します。振込が完了した通帳のコピーは、登記申請の際に必要な「払込証明書」の添付資料となります。
  5. 設立登記申請
    本店所在地を管轄する法務局へ、設立登記申請書と必要書類を提出します。書類に不備がなければ、1週間から10日ほどで登記が完了します。この法務局へ書類を提出した日が、会社の設立日となります。
  6. 設立後の諸手続き
    登記が完了したら、会社の謄本(登記事項証明書)や印鑑証明書が取得できるようになります。これらの書類を使って、税務署への法人設立届出書の提出、都道府県・市町村への事業開始申告、年金事務所での社会保険の加入手続き、ハローワークや労働基準監督署への届出など、各種行政手続きを行います。

専門家への相談も検討する

ここまで見てきたように、会社設立には専門的な知識と多くの時間が必要です。
もし手続きに不安があったり、本業に集中したい場合は、専門家の力を借りるのも賢い選択です。

それぞれの専門家には得意分野があります。

  • 司法書士
    登記申請のプロフェッショナルです。定款作成から法務局への登記申請まで、設立手続き全般を代行してもらえます。最もスムーズかつ確実に会社を設立したい場合に頼りになります。
  • 税理士
    税務の専門家です。法人設立届出書の作成・提出はもちろん、設立後の顧問契約を結ぶことで、節税対策や資金繰りの相談、決算申告までトータルでサポートしてくれます。いきなり法人化の大きなメリットである節税効果を最大化するためには、税理士との連携が不可欠です。
  • 行政書士
    許認可申請の専門家です。建設業、飲食業、古物商など、事業を行うために行政の許認可が必要な場合に、定款作成から許認可申請までをサポートしてくれます。

専門家に依頼すると費用はかかりますが、時間と手間を大幅に削減できるだけでなく、設立後の事業運営を見据えた的確なアドバイスを受けられるという大きなメリットがあります。

無料相談を実施している事務所も多いため、まずは一度話を聞いてみることをおすすめします。

いきなり法人化は、高い節税効果や社会的信用の向上といった大きなメリットがある一方、設立・維持コストや社会保険加入義務などのデメリットも存在します。

年間所得800万円が一つの目安とされますが、消費税の課税タイミングや資金調達の必要性も重要な判断基準です。

メリットとデメリットを総合的に比較し、ご自身の事業計画に合った最適なタイミングを見極めることが、後悔しない選択につながります。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
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経営サポートプラスアルファ ホールディングス

経営サポートプラスアルファホールディングスは税理士法人や行政書士法人などを含む
グループ会社経営によって、従来の会計業界の常識にとらわれることなく、
クライアントの成長フェーズに合わせた幅広い事業展開を行っております。
時代の変化に伴いお客様のニーズを拾い上げ付加価値を追求してきた結果として今の体制、サービスがあります。
そしてこれからも起業家のサポーターとして「経営サポートプラスアルファ」という社名の通り、
付加価値となるプラスアルファを追求していきます。