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人材派遣会社の設立に必要な資産要件とは?起業の流れと注意点をプロが解説

人材派遣会社の設立を検討する際、最も高いハードルとなるのが「資産要件」です。

この記事では、派遣事業の許可申請に必要な「基準資産額2,000万円以上」「現預金1,500万円以上」といった財務基準のクリア方法や、事務所・人員の要件、会社設立から免許取得までの具体的な流れを専門家が分かりやすく解説します。

結論として、派遣会社の起業には自己資金の綿密な準備と、申請から許可まで約2〜3ヶ月かかる期間を見越した資金計画が不可欠です。

この記事を読めば、法改正に対応した最新の許可基準と、設立手続きで失敗しないための注意点がすべて理解できます。

人材派遣業(一般労働者派遣事業)を始めるためには、厚生労働大臣の許可を得る必要があります。

この許可を得るための最大の難関とも言えるのが、厳格に定められた「資産要件(財産的基礎)」をクリアすることです。

派遣労働者の雇用維持や給与支払いを安定して行うため、派遣会社には強固な財務基盤が求められます。

具体的には、以下の3つの基準をすべて同時に満たさなければなりません。

ここでは、それぞれの要件について詳しく解説します。

1.1 基準資産額は1事業所あたり2000万円以上が必要

人材派遣業の許可申請を行うには、1事業所あたり「基準資産額」が2,000万円以上必要となります。

複数の事業所を展開する場合は、基準資産額が「2,000万円 × 事業所数」の金額以上でなければなりません。

ここで注意すべきなのは、基準資産額は「資本金の額」と同義ではないという点です。

基準資産額は、以下の計算式によって算出される、会社の「実質的な純資産額」を指します。

1.1.1 基準資産額の計算式

算出項目計算内容
基準資産額資産の総額(繰延資産及び営業権を除く) - 負債の総額

このように、貸借対照表上の「資産の部」から「繰延資産」や「営業権(のれん)」を差し引いた額から、さらに「負債の部」の合計額を引いた金額が基準資産額となります。
設立直後の会社であれば、基本的には「資本金 = 基準資産額」となりますが、設立後に赤字を出して繰越欠損金がある場合などは、基準資産額が資本金を下回るため注意が必要です。

1.2 現預金額は1事業所あたり1500万円以上が必要

2つ目の要件は、自己資金のうち、すぐに支払いに充てることができる現預金の額に関する規制です。

具体的には、1事業所あたり「現預金額」が1,500万円以上必要となります。

こちらも複数事業所を設置する場合は、「1,500万円 × 事業所数」の金額が必要になります。

この要件は、派遣契約の締結から派遣料金が回収できるまでの期間、派遣労働者への給与支払いが滞らないようにするために設けられています。

1.2.1 現預金額として認められる範囲

区分対象となる具体的な資金
認められるもの現金、銀行の普通預金、当座預金、定期預金
認められないもの有価証券(株式・国債など)、回収前の売掛金、土地や建物などの不動産

基準資産額が2,000万円以上あったとしても、その大部分が不動産や設備投資に充てられており、手元の現預金が1,500万円未満である場合は、派遣事業の許可要件を満たせないことになります。
申請時には、銀行が発行する「残高証明書」の提出が求められます。

1.3 基準資産額が負債総額の7分の1以上であること

3つ目の要件は、会社の財務健全性(他者への依存度)を示す基準です。

基準資産額が、負債総額の7分の1以上でなければなりません。

この要件は「負債比率」を一定以下に抑えることを目的としており、借入金に過度に依存した不安定な経営状態での参入を防ぐためのものです。

1.3.1 負債総額と基準資産額の許容バランス

負債総額の規模必要となる最低限の基準資産額
負債総額が7,000万円の場合1,000万円以上(ただし最低基準の2,000万円要件が優先されます)
負債総額が1億4,000万円の場合2,000万円以上
負債総額が2億1,000万円の場合3,000万円以上

新規設立の会社で外部からの借入金がない、または少額である場合は、この「7分の1要件」で引っかかることはほとんどありません。
しかし、既存の別事業を営んでいる会社が新しく派遣事業に参入する場合は、既存事業の負債(買掛金や未払金、金融機関からの借入金など)が影響するため、事前の財務確認が必須となります。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

人材派遣業(労働者派遣事業)の許可を得るためには、厳しい資産要件をクリアするだけでは足りません。

派遣事業を適正に運営できる体制が整っているか、「事務所」「人(雇用)」「教育体制」の3つの観点から厳格な基準が設けられています。

ここでは、資産要件以外に必ず満たすべき重要な設立基準を詳しく解説します。

2.1  20平方メートル以上の広さが必要な事務所要件

派遣事業を行うための事務所は、どこでも良いわけではありません。

個人のプライバシーに配慮し、適切な業務運営が行えるスペースと構造が求められます。

具体的な事務所要件は以下の通りです。

確認項目具体的な要件と詳細
面積基準事業に使用する専有面積が原則として20平方メートル以上あること。
独立性他の事業や個人の居住スペースと明確に区分されており、独立性が保たれていること。
構造・設備個人情報や秘密を保持するため、面談スペースにパーティション(間仕切り)を設置するなど、プライバシーに配慮した構造であること。
使用権原賃貸借契約書等の名義が申請者(法人)と一致しており、使用目的が「事務所」や「店舗」となっていること(住居専用契約は不可)。

特に、レンタルオフィスやシェアオフィスを利用する場合は注意が必要です。

完全に壁で仕切られた個室であり、自社専用のスペースとして20平方メートル以上を確保できなければ、許可が下りない可能性が極めて高くなります。

2.2 派遣元責任者の選任と常勤の雇用要件

派遣事業を運営するためには、派遣労働者の就業管理や苦情処理などを適切に行う責任者として、「派遣元責任者」を配置することが義務付けられています。

派遣元責任者および事業所の雇用体制には、以下の要件が定められています。

2.2.1 派遣元責任者の主な選任基準

  • 成年に達した後に、3年以上の雇用管理経験(人事や労務管理、または派遣事業の業務経験など)を有していること。
  • 基準日(許可申請日)前3年以内に「派遣元責任者講習」を受講していること。
  • 精神の機能の障害により派遣元責任者の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者でないこと、または破産者であって復権を得ない者でないこと等の欠格事由に該当しないこと。
  • 派遣労働者50人あたり1人以上の割合で選任すること。

2.2.2 常勤の雇用要件(職務専念義務)

派遣元責任者は、原則としてその事業所に常勤し、専任で業務に当たる必要があります。
他社の役員や従業員との兼務、あるいは遠方に居住していて常勤できない場合は認められません。
また、派遣事業を適正に運営するために、苦情処理や連絡調整を迅速に行える体制を社内に構築しておく必要があります。

2.3 キャリアアップ措置など教育訓練の実施体制

労働者派遣法では、派遣労働者の雇用の安定とキャリアアップを図ることが強く求められています。

そのため、許可申請時には「段階的かつ体系的な教育訓練計画」を策定し、実施できる体制を整えておかなければなりません。

2.3.1 教育訓練体制に求められる具体的な基準

  • 段階的かつ体系的な教育訓練の提供:入職時研修から始まり、派遣労働者のキャリアパスに応じた訓練カリキュラムが用意されていること。
  • 無償かつ有給での実施:教育訓練は派遣労働者に対して無償で行い、かつ訓練時間中は有給(通常の労働時間と同等の賃金を支払う)とすること。
  • キャリアコンサルティング窓口の設置:派遣労働者が今後のキャリアについて相談できる窓口を設置し、専門的な知識を持つ担当者(キャリアコンサルタントなど)を配置すること。
  • 実施環境の確保:eラーニングを利用する場合は、受講環境が適切に整備されていることや、受講管理が確実に行える体制であること。

これらの教育訓練計画は、単に計画書を作成するだけでなく、事業開始後に毎年労働局へ報告する義務があります。
実態を伴わない形だけの計画では、許可が下りないだけでなく、事後の監査で指導対象となるため、実現可能な計画を慎重に設計することが重要です。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

人材派遣業(労働者派遣事業)を始めるためには、単に会社を設立するだけでなく、厚生労働大臣からの「許可」を得る必要があります。

この許可を取得するまでには、法人の登記から行政手続き、実地審査まで、大きく分けて3つのステップが存在します。

それぞれの段階で求められる具体的な手続きと、スムーズに進行するためのポイントを解説します。

3.1 ステップ1 株式会社などの法人を設立する

人材派遣業の許可を申請する前段階として、まずは事業の母体となる法人(株式会社や合同会社など)を設立する必要があります。

個人事業主でも許可申請自体は可能ですが、資産要件の維持や取引先からの社会的信用を考慮すると、実務上は法人を設立して申請するのが一般的です。

法人設立のプロセスでは、以下の表にまとめた重要事項を決定し、定款の作成や登記手続きを進めます。

決定・準備すべき項目具体的な内容と注意点
目的欄の記載定款の事業目的に「労働者派遣事業」と明記する必要があります。この文言がない場合、派遣事業の許可申請を受理してもらえません。
資本金の決定派遣業の基準資産要件を満たすため、資本金は最低でも2,000万円以上(1事業所の場合)に設定して登記します。
役員の選定欠格事由(破産者や一定の刑罰を受けた者など)に該当しない役員を選任します。

定款を作成し公証役場で認証を受けた後、法務局へ設立登記を申請します。

登記が完了し、法人の履歴事項全部証明書(登記簿謄本)が取得できるようになって初めて、次のステップである派遣事業の許可申請へと進むことができます。

3.2 ステップ2 労働局へ派遣事業の許可申請を行う

法人の登記が完了したら、本社の所在地を管轄する都道府県労働局の窓口へ、労働者派遣事業の許可申請書と添付書類を提出します。

この申請手続きは非常に専門性が高く、用意すべき書類も多岐にわたるため、事前の入念な準備が欠かせません。

3.2.1 許可申請に必要な主な提出書類

申請時には、主に以下のような書類一式を揃えて労働局へ持参します。
書類に不備があると再提出となり、全体のスケジュールが後ろ倒しになるため注意が必要です。

  • 労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)
  • 労働者派遣事業計画書(様式第2号)
  • 定款および履歴事項全部証明書
  • 役員の住民票の写しおよび履歴書
  • 直近の決算書(新設法人の場合は、開始貸借対照表)
  • 基準資産額や現預金額を確認するための「残高証明書」
  • 事務所の賃貸借契約書および間取り図(レイアウト図)
  • 派遣元責任者の講習受講証明書

労働局の窓口では、担当官による書類の整合性チェックが行われます。
特に、貸借対照表の純資産額や自己資金の額が資産要件を確実に満たしているか、また事務所の契約内容が事業用として適切であるかが厳しく確認されます。

3.3 ステップ3 現地調査を経て派遣免許を取得する

労働局への書類申請が受理されると、審査の最終段階として労働局の担当官による事務所の現地調査(実地審査)が行われます。

この現地調査は、申請書や図面通りに事務所が実在し、派遣事業を適正に行える環境が整っているかを目視で確認するために実施されます。

3.3.1 現地調査でチェックされる主なポイント

現地調査当日は、主に以下の設備や環境が整っているかどうかが厳格にチェックされます。
クリアできない場合は、改善指導が入り、許可の判定が遅れる原因となります。

  • プライバシーの保護:個人情報を取り扱うため、施錠できるキャビネットや書庫が設置されているか。
  • 面談スペースの独立性:登録スタッフの面談や相談を行う場所が、パーテーションや壁で区切られ、外部から見えたり声が漏れたりしない構造になっているか。
  • 事業の実態:事務所の入り口に社名表示(看板や表札)があるか。固定電話やパソコンなどの事務機器が配置されているか。
  • 面積要件:事業に使用するスペースが、規定通り20平方メートル以上確保されているか。

現地調査を無事に通過すると、労働局から厚生労働省へ書類が送られ、最終的な審査が行われます。審査を通過すると、毎月1日付で「労働者派遣事業許可証」が交付され、正式に人材派遣会社としての営業活動を開始できるようになります。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

人材派遣業(一般労働者派遣事業)の立ち上げは、他業種に比べて国が定める法的な要件や資金面のハードルが極めて高いという特徴があります。

「会社さえ作ればすぐにビジネスを始められる」と誤解していると、途中で資金が底を突いたり、いつまでも許可が下りずに開業が遅れたりするリスクがあります。

ここでは、起業準備段階で必ず押さえておくべき3つの重要な注意点を詳しく解説します。

4.1 資本金2000万円と自己資金の違いを理解する

派遣事業の許可を得るためには「基準資産額が2,000万円以上」という要件がありますが、これは「資本金を2,000万円用意すれば自動的にクリアできる」という意味ではありません。

多くの設立予定者がここで最初の大きな勘違いをしてしまいます。

4.1.1 基準資産額の計算式と資本金との関係

基準資産額とは、会社の「純資産」をベースに計算される財務指標です。
具体的には以下の計算式で算出されます。

項目計算式・内容
基準資産額の算出式資産の総額(繰延資産・営業権を除く) - 負債の総額
資本金との違い資本金は会社設立時の元手ですが、設立手続き中に発生した経費(登録免許税、司法書士手数料、事務所の賃貸初期費用など)を支払うと、実際の資産総額は目減りします。

例えば、資本金2,000万円ちょうどで会社を設立した場合、設立登記費用や事務所の敷金・礼金、備品購入費などを支払った時点で、実際の基準資産額は2,000万円を下回ってしまいます。
この状態で労働局に申請を行っても、資産要件未達として許可申請は受理されません。

そのため、資本金自体を2,200万円〜2,500万円程度に多めに設定するか、資本金とは別に自己資金(役員借入金など)を十分に手元に残しておく必要があります。
また、基準資産額の判定は「直近の決算書」または「設立時の貸借対照表」で行われるため、税理士などの専門家と連携して正確な書類を作成することが不可欠です。

4.2 申請から許可が下りるまでの期間を考慮する

人材派遣業は、申請書類を労働局に提出してすぐに営業を開始できるわけではありません。

申請から実際に派遣免許(許可証)が交付されるまでには、約2ヶ月から3ヶ月の審査期間がかかります。

4.2.1 許可申請から事業開始までの標準的なスケジュール

一般労働者派遣事業の許可は、毎月月末までに受理された申請分が、翌々月の1日付(または3ヶ月後の1日付)で許可されるというサイクルで動いています。

ステップ主な手続き内容目安期間
1. 法人設立・準備会社の登記、事務所の賃貸契約、派遣元責任者講習の受講約1ヶ月
2. 申請書類の提出管轄の都道府県労働局へ許可申請書と添付書類を提出随時(月末締め)
3. 審査・現地調査労働局の担当者による書類審査および事務所の実地調査約1ヶ月〜2ヶ月
4. 厚生労働省の許可厚生労働大臣による許可決定、許可証の交付申請から約2〜3ヶ月後

注意すべきは、許可が下りるまでの間は「派遣契約の締結」も「実際の派遣労働の開始」も一切できないという点です。
事前の営業活動やスタッフの登録受付は可能ですが、フライングして無許可営業とみなされないよう細心の注意を払う必要があります。
この空白期間中も、事務所の家賃や人件費などの固定費は発生し続けるため、余裕を持った開業スケジュールを組むことが重要です。

4.3 設立後の運転資金も確保しておく

人材派遣業の経営において、最も黒字倒産のリスクが高い要因が「キャッシュフローのズレ」です。

派遣ビジネスは、「売上の入金」よりも「給与の支払い」が先に来るという極めて過酷な資金繰りの構造を持っています。

4.3.1 派遣業特有のキャッシュアウトとキャッシュインのタイムラグ

派遣スタッフへの給与は、労働基準法に基づき、毎月決められた日に遅滞なく支払わなければなりません。
一方で、派遣先企業からの派遣料金の回収は、翌月末や翌々月末になるのが一般的です。

対象一般的な資金の動き(サイト)
派遣スタッフへの給与支払当月末締め・翌月15日払い、または翌月25日払い(支払いが早い)
派遣先からの売掛金回収当月末締め・翌月末払い、または翌々月5日払い(回収が遅い)

このタイムラグがあるため、例えば新規に10人の派遣スタッフを稼働させた場合、派遣先から1円も入金されていない状態のまま、先に10人分の給与(および社会保険料の会社負担分)を自社で立て替えて支払わなければなりません。

もし手元の運転資金が不足していると、売上は順調に伸びているにもかかわらず、給与の支払資金がショートして黒字倒産に陥ってしまいます。
許可要件である「現預金1,500万円」は、あくまで許可を得るための最低ラインであり、実際の事業運営においては「最低でも稼働スタッフ数ヶ月分の給与をカバーできる運転資金」をあらかじめ手元に残しておくことが、設立後に失敗しないための最大の防衛策となります。

人材派遣会社を設立するためには、1事業所あたり「基準資産額2,000万円以上」「現預金額1,500万円以上」という厳しい資産要件をクリアする必要があります。

なぜなら、派遣労働者の雇用維持と未払賃金リスクを防ぐための十分な財務基盤が求められるからです。

さらに、20平方メートル以上の事務所確保や派遣元責任者の選任といった要件も満たさなければなりません。

申請から免許取得までは数ヶ月を要するため、自己資金と運転資金に余裕を持った計画的な準備を進めましょう。

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